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 スペインが巨大IT企業の利益に新たに課税し始めたことを受け、GAFAの一角のネット通販大手アマゾンドットコムがスペイン国内の業者に課す利用料を引き上げる方針であることが分かりました。トランプ大統領時代はアメリカ政府が企業の代わりに関税の掛け合いなどをしていましたが、いまや中堅国家よりも多くの富と強大な影響力を持つアメリカ巨大IT企業群が、直接国家と対峙する段階に入った象徴的なケースになります。

 スペインが課税するのは、一定の基準を満たす巨大IT企業の利益に課す「デジタルサービス税」、「グーグル税」と呼ばれる税金です。本来、法人税を課しているため新たな課税は邪道とも見えます。

 一方、多国籍企業は知財の使用権などを活用して収益を低税率国に巧みに移し、実際事業を展開する国に税金を十分に納めていないとの実態があります。その解消に、法人税の在り方の抜本的見直しが国際的に議論されています。

 かたや巨大IT企業を抱える米国や中国、かたや課税を強化したい欧州で両者の合意形成は難航しています。これにしびれを切らした国が「国際合意が成立するまでの暫定措置」として、デジタルサービス税に走りつつあるのが現状です。

 ただ、トランプ元大統領のときは、そんなことをすれば関税で対抗されるので、なかなか踏み切れませんでしたが、バイデン政権になり状況が一変しました。バイデン氏は党内支持を固めるため、GAFA解体を訴える党内急伸左派にも配慮せざるを得ず、またトランプ政権との差別化を図るためにも国際融和の姿勢を打ち出したい思惑があります。これにより米国による報復の可能性が低くなる一方、米財務長官は交代で、国際合意はさらに時間がかかることになります。コロナ過で財政も逼迫している中、デジタルサービス税を試す国が出てきたことになります。

 しかしこのことによる代償は高くつくかもしれません。アマゾンが使用料を引き上げれば、当然国内企業は負担が増加します。これに代替する存在はなく、増税同様の痛手を被ります。不満はアマゾンとそれを刺激した政府にも向かうはずです。反撃を受けたスペイン政府がどう対抗するか、デジタルサービス税導入を検討している他の国も注目しています。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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