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大リーグの大谷翔平選手がドジャース入りで合意した契約金が10年総額7億ドル(約1020億円)となり話題となっています。

契約は10年総額7億ドルですが、年平均の年棒7000万ドル(約102億3000万円)のうち、97%にあたる6800万ドル(約99億4000万円)の支払いを延期し、年棒200万ドル(約2億9000万円)を来季から2033年まで受け取り、残りの6800万ドルは10年契約が終了する34年から43年までの間に支払われます。

この契約は大谷選手側からの提案ですが、選手と球団双方にメリットがあります。大谷選手ともなると、選手年棒以外に50億円程度の副収入があるので、当面の年棒が低くても支障はないはずです。むしろ引退後に選手以外の年棒が低下した時に、多額の収入が入るほうが、メリットがあるはずです。しかも契約期間後に先延ばしになった支払いが始まるときにカリフォルニアから税率の低い別の州に引っ越すことで、大谷選手はカリフォルニア州の重い税負担から逃れることができます。カリフォルニア州に住むと連邦政府への税金が37%、カリフォルニア州の州税が13.3%、米国の公共医療保険制度のメディケアに2.35%、州の傷害保険に1.1%の税金が取られ、全体で約53.7%の高税率が課されます。

球団にとってもメリットがあります。それは大リーグでの「ぜいたく税」の存在です。大リーグには、資金が潤沢な球団に超一流選手が集まりすぎないよう、年棒総額が規定額を超えた球団にはぜいたく税が発生します。24年の規定額は2億3700万ドル(345億円)、25年は2億4100万ドル(351億円)です。この規定額を超えますと、1年目は超えた額の20%、2年連続なら超過額の30%、3年以上連続なら超過分の50%もの課税がされてしまいます。

ドジャースは、大谷選手との後払い契約により「ぜいたく税」を考慮せずに選手補強ができます。しかも利子なしと聞きます。これは大谷選手の太っ腹によるものでしょう。

それは大谷選手の現在価値を見ればわかります。今の米国長期金利は4%なので、今後20年間にわたって大谷選手へのキャッシュフローを4%割り引いて現在価値を算出し、その支払総額を求めると3.9億ドルになります。名目7億ドルですが、実質では3.9億ドルとなるので、ドジャースにとっては安い買い物になります。

それもこれも球団の安泰と信頼される名門ドジャースだからこそできる大型契約です。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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