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2022事業年度(22年7月~23年6月)の相続税実地調査の件数は8196件で前年度の6317件からは29.7%増となりました。2年連続で25%を超える伸び率を示し、税務調査の〝脱コロナ〟が鮮明となっています。さらに文書や電話による「簡易な接触」の件数は前年に引き続き過去最高を記録し、当局の〝武器〟として完全に定着したことがうかがえます。

実地調査による申告漏れ課税価格は2630億円で、こちらも前年度の2230億円から2割近く増加しています。しかし一件当たりの追徴税額は816万円で、こちらは昨年よりは7.9%の減少となっています。

特に目立つのが、実地調査に至らない、納税者への問い合わせや指導である「簡易な接触」の増加です。「お尋ね文書」とも呼ばれ、名称は「資産の買入価額についてのお尋ね」「申告書についてのお尋ね」「相談のご案内」など様々ですが、内容はほぼ同じで納税者のもとに通知書を送り、回答を得ることで取引内容や資産状況を確認することが目的となっています。簡易な接触はコロナ禍で思うように実地調査が行えないなかで実績を上げるために急増しましたが、脱コロナを経て実地調査が復活するなかでも、そのまま効率的な手法として定着した模様です。2022事業年度には15000件のお尋ね文書がばらまかれ、686億円の申告漏れを発掘しています。簡易な接触による1件当たりの追徴税額は58万円と、決して軽視できない存在です。

また当局にとって重点的なターゲットとなっているのが、無申告事案です。当局は「自発的に適正な申告・納税を行っている納税者の税に対する公平感を著しく損なう」として、様々な情報をきっかけに積極的な調査を行っています。22事業年度には、前年比122.4%となる705件の実地調査を行い、申告漏れ課税価格は同129.5%の741億円、追徴税額は実に前年比148.7%増加の111億円を記録しました。1件当たりの追徴税額も121.5%増の1570万円と軒並み伸びています。さらに海外資産関連も狙い所となっており、前年度比約3割増となる845件の実地調査が行われています。特に申告漏れ課税価格は70億円で、63%増だった前年からさらに25.2%増と近年で著しく伸びつつあります。

また国税庁が発表した22年分の相続税の申告実績によれば、相続は156万9050件発生し、そのうちの9.6%に当たる15万858件で相続税の申告書が提出されました。実際に税額が発生したのは約11万件で、納税者は32万9444人に上ります。

 課税割合9.6%は、相続増税が行われた2015年以降では最高となっています。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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