23451770_m

 「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」を実現させるというお題目で、e-TAXで電子申告する法人などに対し、税務当局は原則として納付書を送付しないこととしています。電子申告は税理士が代理送信することが非常に多く、納税はインターネットバンクを使わずに会社が窓口で行うのが通常ですので、納付書の送付を行わないのは納税の利便性に照らして問題が大きいように思われます。インターネットを経由して納税を電子的に行う電子納税という方法もありますが、財務省の発表によると、最新の状況における電子納税の普及率は11%程度とされています。

税務当局は納付書の送付をストックしておきながら、現金で納税する場合には「税務署の所定の様式で納付をお願いします」という指導をしています。地方税は会計ソフトから出力される用紙をプリントアウトすれば納付できるので、国税も努力さえすればこのような形で納付させることができるはずなのに、その努力を怠っています。このため、納付書で納付せざるを得ない納税者は、わざわざ税務署に納付書を取りに行く必要も生じるわけで、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」のお題目とは明らかに矛盾しています。

税務当局にすれば、納付書の送付がなくなれば、輸送コストが大きく低減しますし、税務署の納付書で納付させれば、税務署のシステムに入力させることが非常に楽ですから手間もかかりません。

実際に電子申告も、紙の申告よりも税務署の処理がはるかに楽なので、税務当局は導入を推進してきました。e-TAXの創設当初は、税務当局は「便利性」を強調しつつ、電子証明書を取得する多大な手間を納税者に押し付けてきました。この納付書の取り扱いも、考え方は等しく、納税者に納税の手間やコストを押し付けています。

この税務署の納付書を使えという税務当局の要請については、「税務当局は納税しないやつを決して許さんが、納税に伴うコストは納税者が当然に自腹を切るものである」という考え方が基本にあります。国家権力を背景とした仕事というのは、納税者へのサービス精神を期待することがそもそも無理なのかもしれません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

「所長の独り言」一覧はこちら

 

免責
本記事の内容は投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。また、本記事を参考にして訴訟等行為に及んでも当事務所は一切関係がありませんので当事務所の名前等使用なさらぬようお願い申し上げます。