~ 売却する ~
一番シンプルな対策方法は、空き家を売却してしまうことです。どうしようか迷ったら、まずは早く売ってしまうのがお勧めです。なぜなら、築年数が短いほど、また、良い状態を維持しているほど、高い価格で売れるからです。また、今後は空き家が急増することが予想されており、未来になればなるほど住宅の価格が下がるからです。
また、空き家を売却してしまえば、固定資産税を納税しなくて済みますし、管理費用の支払いもなくなります。相続前であれば、不動産を売却して現金化しておくことで、相続トラブルを防ぎ、相続税の納税資金にも充てられます。
空き家を売却するのであれば不動産業者に依頼することになりますが、その前にまずは、その場所の住宅の相場価格を把握しましょう。
国土交通省が運営している「不動産取引情報検索サイト」で実際に取引された不動産物件の価格を確認することができます。一部の物件しか掲載されていませんが、だいたいその場所の類似の物件を見ることで、相場価格を把握できます。
そのうえで不動産業者に査定を依頼して詳しい価格を知ることができます。事前にある程度、相場価格を把握していれば、不動産業者から言われるままの価格で売却してしまうのを防ぐことができます。
住宅価格についてですが、東京・大阪・名古屋などの大都市圏では駅前や商業地区を中心に価格があがっていますが、それ以外の地域ではバブル期と比較して大きく価格が下がっているので要注意です。特に多摩ニュータウンなど、かつて都市開発されて栄えた郊外の住宅地も人口流出が顕著で、価格が下がっています。住宅が木造で築年数が25年を超えていれば、住宅部分はまったく価値なしと考えて良いです。
購入時の価格よりも大きく下落しているとショックかもしれませんが、時が経てば経つほどもっと下落しますので、現状の価格を把握したうえで早めに売却に向けて動くようにした方が良いと思われます。
住宅を購入する人の視点に立てばわかると思いますが、なるべくきれいな状態であれば空き家を高く売ることができます。外壁も内装もボロボロな状態では、さすがに誰も購入したいとは思わないでしょう。クリーニングや修復をすれば十分に住める状態なのであれば、多少費用をかけてきれいな状態にした方が高く売れます。ハウスクリーニングは住宅の広さや汚れの程度にもよりますが、10万~20万円程度で行えます。費用はさらに嵩みますが、白い壁紙に貼り替えるだけで部屋全体が明るくなります。特に水道周りを清潔にしたり、観葉植物を置いたりするのも効果的です。
売却処分は簡単にいかないケースも多くあります。なぜなら、空き家の資産評価が難しいからです。
中にはほとんど買取金額が付かないものもあるようです。また、なかなか買い手が見つからないために売却成立までに時間がかかるケースも多いと聞きます。
郊外の古い住宅だと全く買い手がつかないこともあり、最終的には解体せざるを得なくなる場合もあります。解体費用がかかってしまいますが、住宅を撤去して更地にしたほうが、土地を有効活用できますので土地の価格が高くつきやすくなります。
解体費用は、木造の場合は100~200万円程度、RC造の場合は200~300万円程度が一般的です。柱が多い、接している道にトラックが入れないなど特殊な状況では、さらに料金がアップします。
不動産業者の腕次第では、なるべく早く良い条件で売却できることもありますので、何社か不動産業者を回ってみて、業者の信頼度や実績を確認してから実際に依頼するのも良いでしょう。
空き家は早めに売却したほうが良いと述べましたが、相続発生前であれば、「生前」と「相続後」、それぞれ売却するタイミングによりメリットがあります。
まず生前に売却しておくことで、相続発生時の遺産分割がスムーズになります。不動産の場合は分割することが難しいため、相続人間で取り合いとなったり、とりあえず共有してあとからトラブルになったりするようなケースが多い傾向にありますが、不動産が現金化されていればそういったトラブルを回避してスムーズに遺産分割を終えることができます。また、売却した資金を使って介護施設や老人ホームなどの入居資金にあてるのも良いでしょう。
ただし、空き家の売却により譲渡所得税がかかる可能性があることにご注意ください。
一方、相続発生後に売却した場合については、仮に相続税が発生するご家庭の場合には、空き家の売却に伴って発生する譲渡所得の計算において、相続税の一部を取得費として加算することができるため、生前に売却するよりも譲渡所得税を節税することができます。
また、2015年より期間限定で、「空き家を譲渡したときの譲渡所得の3,000万円特別控除」という特例制度ができました。空き家も不動産であり売却すると譲渡所得税が発生するのですが、この特例により税負担が軽くなり売却しやすくなりました。