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 銀行や証券のネット口座、暗号資産などのデジタルの「資産」が相続によってデジタル「遺産」に変わる時、アナログ時代には起こりえなかった新たな問題が出てきます。不動産や現預金といったアナログ遺産であれば、現物や通帳、登記などがあるので把握しやすいのですが、デジタル遺産は相続人が存在に気付かないケースが多く、相続の現場でトラブルが目立ちます。遺産分割協議後に新たな遺産が見つかると、協議のやり直しが必要になるなど、相続手続きがスムーズにいかず、さらには多額の損失や延滞税などが発生するケースもあります。

 国税庁によりますと、2020年度分の相続財産の金額の構成比は、「土地」34.4%、「現預金等」33.7%、「有価証券」15.2%、「家屋」5.2%、「その他」11.5%となっています。相続財産と言えば不動産の印象が強いですが、現預金と有価証券が半分近くを占め、金融資産の割合が大きいことがわかります。今後はネットで管理する預金や株式、投資信託、保険などに加え、暗号資産やFX、電子マネーなども浸透し、またデジタル法が整備されたことで、デジタル資産の相続が増加してくることが想定されます。デジタル資産の最大の特徴は、目に見えないことです。デジタル〝資産〟がデジタル〝遺産〟に変化したとき、その存在を示す実物がないことで、把握することが困難になります。

これに対して政府は生前に預貯金口座に紐づけされたマイナンバーを使って口座の所在を確認できるようにし、円滑な相続を後押するため、遺産を引き継ぐ家族などが故人の保有口座を把握しやすい仕組みの創設を2024年度までに目指しています。取組方針ではまず、新規口座開設時などに金融機関が国民に対しマイナンバーの告知を求めることを法律上の義務として定め、その上で預金保険機構をハブとし、各金融機関とをオンラインでつなぐ仕組みを構築。告知を受けた金融機関のみならず、各金融機関の口座への付番を、本人同意の下、可能にします。マイナポータルからオンラインで付番を申し込めるようにもします。構築した仕組みを利用し、相続人の求めに応じ、あらかじめ被相続人がマイナンバーを付番しておいた口座を、機構が金融機関に照会して探し出し、発見された口座を、マイナポータルを通じて相続人に示します。
 しかし、あくまでもマイナンバーと銀行口座の紐づけは、任意であり義務ではありません。

政府は今後、メリットを説明したうえで銀行口座との紐づけを勧めたい考えです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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