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 2024年から相続不動産を3年以内に登記することが義務化され、怠れば過料が科されることになります。相続の際に遺族が登記手続きをせず、登記上で誰が持ち主なのか確認できない所有者不明土地が増えている事から、去年4月に不動産登記法と民法が改正され、親や親戚から相続したまま手続きをしていない不動産は、もれなく対象となります。

 全国で放置された土地の総面積は2016年時点で九州本島を上回る410万haに上り、今後これらの土地が放置されますと、2040年度には北海道本島に迫る720万haに達し、約6兆円の経済損失をもたらす可能性があると有識者でつくる研究会では試算しています。政府は再開発事業や災害復興などの妨げになっていると問題視しています。

 国の調査では、登記されている土地の約20.1%が所有者不明で、そのうちの約66%はすでに亡くなった人の名義になっています。登記簿上は亡くなった親が所有者のままで、実際は子供などが管理しているというケースです。さらに残りの約34%は転居先などの住所変更が届けられていませんでした。所有者が引っ越しをして住所が変わったにもかかわらず、住所変更の登記を申請せずに連絡が取れなくなることが多々あります。つまり所有不明のほとんどの土地で現所有者への登記変更がされていないということです。

 相続登記とは、相続によって不動産を取得した時に不動産名義を相続人に変更することをいいます。一見当たり前のようですが、現状では相続で譲り受けた不動産を登記するかどうかは任意で、相続人の判断に委ねられています。そのため相続人が固定資産税などの税負担を避けたり土地管理の煩わしさから放置したりするケースが多数生じています。

 このままにしておきますと、

①不動産の売却や担保設定ができない

②権利関係が複雑になる

③不動産が差し押さえられる可能性がある

④認知症発症で遺産分割協議ができない

⑤必要書類の入手が困難

⑥修復もままならず不動産が荒廃

などといったリスクが伴います。

 この状況を受け、国は2020年に土地基本法を本格改正し、土地所有者の責務を明確化しました。今回はその総仕上げとしての民法や不動産登記法の改正を行いました。

 相続を知ってから3年以内に所有権移転登記を行わないと10万円以下の過料が科されることになります。2024年をめどに施行される予定になっていますが、施行前に相続した不動産でも登記が義務付けられる対象になりますので注意してください。また住所変更登記も2026年までに義務化される予定となっております。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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