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今年最大のニュースは、なんといっても安部元首相が凶弾に倒れた事件でしょう。安倍晋三元首相が7月8日、銃で撃たれて殺害された事件は、近鉄・大和西大寺駅北口のバスターミナルそばで起きました。弔問記帳には500mを超える列ができたそうです。悲しんでいる暇もなく、安部家は、これから相続という大事な問題と向き合い、10カ月以内には整理して相続税の申告もしなければなりません。渋谷の豪邸は実勢価格で20億円もします。これを財産評価基本通達に従って相続税評価額に直すと約15億円~16億円位になります。概算では、土地は実勢価格の約8割、建物なら5割から7割くらいが相続税評価額になる計算です。しかし渋谷の豪邸は、名義人がお母さんの洋子さん名義なので実際には山梨の別荘(建物部分)を入れて安部さんの遺産は3億円程度になるみたいです。相続人は洋子さんと奥さんの昭恵さんの2人になります。昭恵さんは配偶者の税額軽減で少なくとも1億6千万円まで相続しても相続税がかかりませんので、負担はそれほど多くはないと思われます。

 問題は、お母さんの洋子さんが亡くなった時の相続税です。渋谷の豪邸や別荘の土地部分を含め、安部家の財産の多くは彼女名義となります。あちこちに不動産がありますので相続財産は20億円を軽く上回る計算です。一方、相続人は、安部さんのお兄さんと弟さんだけだから基礎控除額はたったの4200万円、相続税率が55%となり、相続税は一人当たり数億円となってしまいます。

 突然の死は他人事ではありません。交通事故や心臓発作での突然死はあり得る話です。どんな方でも自分はまだまだ死なないと思っています。安倍さんみたいに60代の方は、大抵は死に対する準備はしていません。しかし遺された家族のことを思えば、普段から相続の準備をして家族の負担を減らしておくことを考えるべきでしょう。

 相続手続きには、大きく分けて3つあります。

 一つ目は遺言書の確認。日本の相続では、故人の意思が最も尊重されます。自筆証書遺言の場合には、裁判所で手続きが必要になります。

 二つ目が他の相続人の捜索。相続人が揃わないと遺産分割協議ができません。再婚後に亡くなったら、前妻の子供も相続人になりますし、隠し子を認知していたら、その子も相続人になります。

 三つ目が財産の捜索。すべての財産と債務を洗い出しします。遺産分割をした後に遺産が見つかったら、基本的には遺産分割協議をやり直ししなければなりません。その場合には相続税の申告もやり直しになります。要注意なのが目に見えないネット銀行やネット証券での資産。遺族にとってはなかなか気づきにくい資産と言えます。生前に財産一覧を作っておけば、相続手続きが非常に楽になります。

 その他にも、納税資金の準備をしていたならば、相続人から非常に感謝されます。安倍家の場合は、銀行が納税用にいくらでも融資してくれるので困らないでしょうけど普通の家はそうはいきません。特に財産の大半が不動産の場合には納税資金で困ることになります。物納という方法もありますが、ハードルは非常に高くなります。そもそも物納は、延納しても金銭での納付が困難な場合に限られます。この延納にも、分割払いの利息のような税金がかかります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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