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 相続税法の規定では、税額を分割しても納められない場合には相続財産を国庫に納める「物納」を認めています。しかし相続した土地を物納したくても、様々な理由で納税額に見合うだけの土地をきっちり分割できないこともあります。こうした場合には、納税額以上の価値を持つ土地全体を納めて、その後に国から〝おつり〟を受け取ることができます。このことを「超過物納」といい、物納に向いた適当な財産がない場合に限り認められています。注意したいのは、この〝おつり〟の税務処理です。

 相続税額を超える価額の財産を物納したことにより、超過物納部分が生じたため、過誤納金として金銭で還付された場合、その過誤納金に相当する部分については譲渡所得の課税対象になります。租税特別措置法第40条の3(物納による譲渡所得等の非課税)の規定は、延納によっても金銭で納付することを困難とする金額として物納の許可を受けた相続税額に対応する価額の財産についてのみ適用されます。したがって、金銭による納付を困難とする相続税額を超える価額の財産により物納された場合において、金銭をもって還付されることとなる当該財産の超過物納部分については、通常の譲渡の場合と同様に譲渡所得の課税対象となります。この場合の課税時期は、相続税法第43条第2項の規定により納付があったものとされる日(引渡、所有権移転の登記その他法令により第三者に対抗することができる要件を充足した日)となります。

 また、相続税の申告期限から3年以内の物納の場合には相続税額の取得費加算の特例(措法39)の適用も受けることができます。相続した土地を売ったケースで相続税の一部を経費と認める「取得費加算の特例」では、物納申請した土地の分を除いて、取得費に算入する相続税額を計算しますが、超過物納のおつり部分も、取得費の計算に含めてもよいとされています。

 なお超過物納が認められるのは、例えば、その土地を分割することにより、分筆後に物納に充てようとする土地及び分筆して手元に残る土地のいずれもが居住用あるいは駐車場といったその地域における通常の用途に利用することができないと認められる場合や、法令等の規定により一定の数量又は面積以下に分割が制限されているような場合などをいいます。

さらに担保権が設定されている土地や境界線が明らかでない土地は不適格財産となりますので注意が必要です。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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