第1244話 お墓の価値観
遺骨の埋葬に当たり、特定の墓石を持たない「樹木葬」を選ぶ人の割合が、全体の半数を占めています。かつてはお墓の主流であった「一般墓」はその割合を大きく減らし、「納骨堂」や「合祀墓・合葬墓」が増えるなど、お墓を巡る価値観がこの数年で大きく変化しています。かつて、成功者にとって一種のステータスであった立派な墓は、節税策としても機能してきましたが、今後は残される家族の気持ちも踏まえて考える時代になりつつあります。
樹木葬が一般墓を抜いてトップとなったのが2020年です。つまりこの数年間で、お墓に対する消費者の意識が劇的に変化したことがうかがえます。この背景には、核家族化や少子化が進む現代では、承継や管理の負担がない供養法を積極的に選んでいる傾向があります。
樹木葬は、霊園などにある樹木を墓標として、その周辺に遺骨を埋葬する方法で、一般墓のように家ごとの墓石を持たないことが特徴です。多くは永代供養の形をとり、埋葬時に一定の金額を納めれば、その後の管理費などを支払う必要はありません。代々にわたって承継する必要がないので、相続にあたって誰が〝墓守〟になるかでもめる心配もなく、ランニングコストもかかりません。
樹木葬の形態は、大きく分けて、シンボルツリーの周りに複数の遺骨を埋葬する「集合型」と、各区間内に一本の木を植えて個別に埋葬する「個別型」があり、さらに、里山の一角を整備した自然に近い環境で埋葬する「里山型」や、アクセスが良い都市部の公園墓地や霊園内に設けられる「公園型」など、その形態は多様化しています。
お墓や仏壇、位牌、仏具、神棚、家系図といった「祭祀財産」は、相続税法上、相続税の非課税財産として扱われます。ただし、祭祀財産として認められるにはいくつかの要件があり、
① 社会通念上、常識的な範囲の金額であること
② 被相続人(亡くなった人)が生前に購入・建立していること
が求められます。
この制度により、生前にお墓を購入することで相続税の課税対象となる資産の総額を減らし、相続税を減額する相続対策が常態化してきました。
しかし現在社会では、相続人にとってお墓自体が重い負担になるようなら、いかに相続税が減額できてもありがたいとは思えない風潮が高まりつつあります。たとえどんなに立派なお墓を残したとしても、相続人にとってはただの金食い虫であると感じる人も出てきています。
相続人にお墓の価値を感じていないのであれば、立派なお墓を残して一時的な相続財産を圧縮することができたとしても、年間管理費や維持のための手間、将来的な墓じまいの費用など、一生にわたって金銭的・精神的負担がかかってしまいます。「子どもたちのため」と思って建立したお墓が、ともすれば墓守の押し付け合いから。争族の種になりかねません。
こうした点を踏まえての相続税対策では、お墓を検討する際、いくつかの考慮すべきポイントがあります。
1つ目は、節税効果と維持コストのバランスです。祭祀財産を非課税にできるメリットと、永続的に発生する管理費や手間を比較検討する必要があります。
2つ目は、家族の意向と承継の負担を考慮することです。生前に家族と十分に話し合い、将来的に誰が墓守をするのか、維持管理が可能かを確認することが肝要です。「承継の負担を掛けない供養」が現代の主流な価値観であることを理解する必要があります。
そして最後に、税法が規定する「祭祀財産」の要件の遵守です。相続税対策としてお墓を建立する以上、非課税とするために、支払いを生前に完了させておくことなど、税法上の要件を厳格に守らなければなりません。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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