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 第24回冬季五輪の北京オリンピックが4日から開催されていますが、今大会は、新疆ウイグル自治区における人権状況などが問題視され外交ボイコットする国も現れ、一種異様なオリンピックとなっています。東京オリンピックに続きコロナ禍での開催となる北京オリンピックですが、今回は、前回行われた東京五輪についての税金との関係について書いてみたいと思います。

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は、大会終了後初となる理事会を去年9月28日に開催し、決算を今年4月以降に取りまとめる方針を固めております。武藤敏郎事務総長は理事会後の会見で費用の概算について問われると「歳入や歳出を詰めて収支がどうなるか、数字が出てきてからでないと規模感は申し上げられない」と明言を避けました。

 武藤氏の発言を受け、ある野党議員は「既に五輪経費に投入された税金について規模感すらわからないなどということはあり得ない。税金が何にいくら使われたのかくらいは説明できるようにしておくのが筋でしょう」と批判しています。

 現時点で組織委や国、東京都の3者が公表している資料によりますと、五輪開催にかかった経費の総額は3兆円を優に超えると見込まれます。2013年の招致時に東京都が示した経費総額の見積もりは7340億円でした。当初の予算を低く見積もるのは招致を有利に進めるための手法として珍しくないとはいえ、低予算の「コンパクト予算」から過去最大規模の予算まで膨らんだのは異例です。

 さらに現状で公表されていないブラックボックス化した経費の存在により、今後の検証次第では五輪に投入された税金の総額は一層膨らむ可能性があります。

 例えば、「大会経費」に含まれない別枠の予算である「大会関連経費」が大きく積まれましたが、国の支出合計額はいまだ不明です。「関連経費」とは、五輪の大会経費として活用されているにもかかわらず、既存施設の改良など大会後も有益という理由から「大会経費」に算入されていない経費のことです。大会経費と別枠で計算している理由について組織委の関係者は「大会経費を低く見せるため、IOCから再三にわたって別枠での経費捻出を求められた」と明らかにしています。

 会計検査院によりますと、国は2019年時点で1兆600億円の大会関連経費を支出しています。しかし会計検査院の調査自体も公表資料をもとに算出したもので、実態を把握しきれていません。国の大会関連経費は、監査の甘さを良いことに青天井で使われており、総額として3兆円には遠くとどまらないとする声もあります。

 さらに組織委と民間業務の契約の詳細は非公表となっていることから、業務委託をめぐる利権問題の疑惑も取り沙汰されています。

 組織委負担分の経費はスポンサー収入などを財源とするため原則として税金からは拠出されないものの、チケット収入(予算900億円)の無観客開催による減少分は都や国の補てんが必要とされています。

 湯水のごとく投入されてきた多額の経費は都や国の一般会計から支出されており、都民をはじめとした国民の税金による負担となります。現時点で公表されている経費総額(大会経費+関連経費)は、都が1兆4519億円、国が1兆4559億円となっております。国の負担分につきましては、組織委の決算終了を経て、国会や会計検査院により検証されます。

 ブラックボックス化した経費の存在や組織委と民間企業との契約で非公開になっている経費など利権問題などが絡み合う中、説明責任がしっかり果たされるのかについては疑問が残ります。膨れ上がった経費による赤字のツケは国民に回ってきます。納得がいく検証と説明を期待するしかありません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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