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  それまで司直の手の及ばなかった裏社会のトップに国税当局が手をかけたというケースは、日本にもあります。去年8月24日、複数の市民襲撃事件などに関与したとして死刑判決を宣告された特定危険指定暴力団・工藤会の総裁、野村悟被告のケースがそれにあたります。

 暴力団の上納金システムは、これまで法人税を課せないアンタッチャブルな存在でした。暴力団が会社であれば法人税を課すことができ、「人格のない社団等」だと法人税を納めなければなりません。しかしどちらにも該当しませんので、そもそも納税義務が存在しないことが、これまでの脱税立件のハードルとなっていました。

 個人の所得として見ても、上納金を不動産購入や飲食費として私的に使えば個人所得として所得税が課税されますが、運営経費として使われる限り課税されることはありません。これは町内会やPTAが課税されないのと一緒で、ここに裏社会特有の資金の流れの不透明さが重なった結果、暴力団の上納金は長年、国税にとっても簡単に手を出せないターゲットでした。

  しかし工藤会の脱税事件では、資金管理担当者だった組幹部が作成したメモを福岡県警が押収できたことで、トップが私的に上納金を流用していた事実を証拠としてつかむことに成功し、暴力団トップの個人の脱税が初めて立証できました。これから今後の暴力団マネーの解明につながる貴重な先例になると期待されています。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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