第1086話 セクハラ解決金
ある会社で、管理職のIさんがセクハラ問題で従業員から訴えられました。会社は解決を図るべく協議を続けた結果、和解が成立。その条件は、被害者である従業員にIさんが解決金を支払うことでした。しかしIさんは解決金の負担について一度は了承したものの、セクハラの事実関係について納得できない点があるとして、解決金の支払を一転して拒否しました。
そこで会社としては、当時者であるIさんは依願退職を申し出ているため、退職金の一部から天引きする形で解決金を負担させようと考えます。
ここで税務上の問題について考えてみます。
会社(法人)が負担すべき解決金は損金算入が認められます。しかし他者が負担すべき解決金を会社が負担すれば「立替金」となり、資産計上しますので原則損金算入はできません。もし会社がIさんに立替金の請求を断念すれば、その解決金は、その負担を免れたIさんに対する「給与」として取り扱いされます。
それでも退職金で解決金の立替を相殺することは、会計上及び税務上は問題ありませんが、問題は労働基準法にあります。同法においては、従業員の責務と賃金とを相殺、控除することが原則として認められていません。Iさんの同意があれば相殺は認められるのですが、今回のように本人に拒否されてしまうと、全額退職金を支払ったうえで、改めてIさんに対する損害賠償請求を行わなければなりません。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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