第1109話 小口化不動産
「相続税対策は不動産対策」とよくいわれます。現金であれば額面通りの評価をされるところが、不動産であれば相続財産としての評価額を大きく抑えられることがその理由です。
とはいえ、不動産を買うということには一定のリスクが伴います。非常に大きな金額が動く買い物ですし、もし金融機関から融資を受けることになればローン返済や金利上昇が想像以上のマイナス要素をもたらしかねません。
購入した不動産をどう売却するかという出口戦略も必要となり、さらに所有時の管理、運営が何より大変になります。たとえ自己資金だけで購入できたとしても、多くの物件を持てなければリスクを分散することが難しくなります。
こうした不動産のリスクを軽減しつつリターンを確保する手法として「不動産小口化商品」が注目されています。不動産小口化商品とは、出資者たちでお金を出し合って不動産を取得し、その運営をプロに行わせ、得られた収益を、お金を出し合った皆で分配するというものです。多人数で出資しますので好立地にある不動産など一人では到底購入できないような物件を運用でき、その一方で出資者一人当たりの出資金額は抑えられるので、その分複数の不動産に投資してリスクを分散させることもできます。また通常の賃貸物件と異なり、所有する持分40口のうち20口のみを売却して現金化して相続税の納税資金に充てたり、代償分割の原資にしたりすることもできます。
不動産小口化商品にはいくつかのタイプがあり、そのなかでも代表的なものが、出資者と運営事業者との間に組合を挟む「匿名組合型」と、出資者が直接運営事業者と契約を結ぶ「任意組合型」とがあります。特に相続税対策として考えた時には、共有持分とはいえ出資者が不動産を持つ形になる「任意組合型」のほうが、メリットが大きくなります。小口化されたとはいえ不動産を持っていることに変わりなく、現金を不動産に換えたのと同じ税金面でのメリットをそのまま受けられるからです。一方の「匿名組合型」では、出資されているのはあくまで現金であり、相続財産としてみた時には100%の額面で評価されてしまいます。
もちろん不動産投資である以上、思っていた通りの利回りを実現できないケースや運営事業者が倒産してしまうなどの事態も考えられます。さらに不動産を投資信託化したJ-REITなどに比べて市場が小さく、いざというときに買い手が見つかりにくいなどの小口化特有のリスクもあるのでご留意ください。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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