第1124話 フリーランス法

去年の11月からフリーランス法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が施行されています。企業側が、フリーランスの事業者に仕事を依頼する際に気を付けるべきことを定めた法律です。
近年、働き方の多様化が進み、フリーランスという働き方が普及してきました。フリーランスは「組織」である企業から「個人」として業務を受けることや、企業の従業員でないため、労働基準法などの法律による後ろ盾がないこと等により、取引先である企業との関係で交渉力に差が出ており、一般的に立場が弱いことが指摘されていました。
実際にフリーランスが企業からの報酬の不払いや支払遅延、契約条件の一方的な変更や中途解約等のトラブルに巻き込まれることは多くあります。こうしたフリーランスの地位の問題が、フリーランスという働き方が普及したことにより、社会全体の問題としてとらえられることとなり、現在の状況を改善するため、フリーランスと発注事者の間の取引の適正化及び、フリーランスの就業環境整備を主な目的としてこの法律が施行されています。
この法律の適用者のフリーランスとは、業務委託の相手方である事業者で従業員を使用しないものを指し、また発注事業者とは、フリーランスに業務委託する事業者で従業員を使用するものをいいます。この従業員とは、週20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれるものを指します。
フリーランスに一定期間以上業務を委託する発注事業者は、以下の義務を負うこととなります。
①書面等による取引条件の明示
取引条件とは「業務の内容」「報酬の額」「支払期日」「発注事業者・フリーランスの名称」「業務委託をした日」「給付を受領/役務提供を受ける日・場所」「検査完了日」「報酬の支払方法に関する必要事項」をいいます。
②報酬支払期日の設定・期日内の支払
発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り早い日に報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払わなければなりません。
③禁止行為
フリーランスに対し、1か月以上の業務委託をした場合、次の7つの行為をしてはいけません。
●受領拒否 ●報酬の減額 ●返品 ●買いたたき ●購入・利用強制
●不当な経済上の利益の提供要請 ●不当な給付内容の変更・やり直し
④募集情報の的確表示
広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際に
・虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはいけません。
・内容を正確かつ最新のものに保たなければなりません。
⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮
6か月以上の業務委託について、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をしなければなりません。
⑥ハラスメント対策に係る体制整備
フリーランスに対するハラスメント行為に関し、次の措置を講じなければなりません。
⑴ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発
⑵相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
⑶ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応など
⑦中途解除等の 事前予告・理由開示
6か月以上の業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、
・原則として30日前までに予告しなければなりません。
・予告の日から解除日までにフリーランスから理由の開示の請求があった場合には理由の開示を行わなければなりません。
また発注事業者に従業員がいない場合においても、①は守らなくてはいけません。
なお、違反に対しては公取委による勧告や、勧告に正当な理由なく従わない場合の命令が規定されており、この命令にも違反した場合は罰則として50万円以下の罰金が規定されております。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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