第37話 不法所得に対する課税

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22日午前5時59分ごろ、福島県沖を震源とするマグニチュード(M)7・4の地震が発生しました。仙台市では140センチの津波も観測されております。気象庁によると、東日本大震災の余震とみられ、140センチの津波観測は大震災以降、最大。マグニチュードの規模はM7.3の阪神大震災や熊本地震を上回りました。津波の威力は、想像を超えるものがあります。津波は非常に大きなエネルギーを持ち、大量の水を運んできます。防潮堤などを乗り越え、津波が勢いを持って陸上を進んできたときには、深さ20~30センチで多くの人が転んで流される危険があります。深さ50センチですと、ほぼ立っていられる人はいません。1メートルになりますと、全く抵抗することができなくなります。

 東北大地震の時には、仙台市で7.2m、石巻市で7.7m、仙台空港周辺で12m、福島県の富岡町では21.1mの津波が発生しております。こうなるともうなすすべもありません。

 ただ今回の津波による被害は、なかった模様とのこと。まず一安心しました。

 話は、税金の話に戻りますが、前回では、大麻取締法のお話をしました。ただ、このような覚醒剤や麻薬で稼いだお金には税金がかかるものなのでしょうか?

 この問題については実は裁判例があります。最高裁昭和46年11月9日判決です。

 ある金融業者が債務者から不法な利息を取って収入を得ていたケースで、本来はその利息の一部は利息制限法に違反する無効なものだったのです。国はこの金融業者に対して所得税を課すべきと判断し、課税しました。これに対して金融業者側は、「利息制限法に違反する部分の利息は、債務者から返還を要求されたら当然に返さねばならない不法な収入である。つまり無効なものなのだから、これは所得ではない。したがって所得税を払う必要はない」として裁判で争ったのです。

 では、裁判所はこれに対してどのような判断を下したのでしょうか?

 実は、この事例では金融業者が敗訴しました。裁判所は、民法上無効な収入であっても現に返還請求がされるまでは一応当人の収入として返還されることはないのだから、これを所得と認定するのに差し支えはない、と判断し、課税庁の主張を認めたのです。

 当然といえば当然の判決ですよね。

 現在、国は所得税法基本通達36-1において「法第36条第1項に規定する「収入金額とすべき金額」又は「総収入金額に算入すべき金額」は、その収入の原因となった行為が適法であるかどうかを問わない。」として、違法行為によって得た収入も「所得」を構成することを明確にしています。

 昭和26年の古い所得税基本通達の148には、窃盗、強盗又は横領により所得した財物については所得税を課さない、とする規定がありました。盗んだものや横領したものはあくまで本来の持ち主の所有物であって、どろぼうさんらの所有ではない、というのがその根拠だったそうです。これは、民事法上有効に保有できない利得は所得ではないという考え方で、かつてはこれが国の公式見解だったようです。

 今日では、国はこの見解を放棄し、上述の通り違法行為によって得た収入も「所得」であるという立場を取っています。

 さて、本題に戻りますが、結論からいうと、不法な薬物の対価は民事上有効に保有できます。日本の民法では、このように不法な理由によって与えた金品は、相手方にその返還を求めることができないという規定があります。民法第708条です。ということは、民事上このようなお金は返す必要がないわけですから、これは民事上有効に保有できる利得といってよいわけです。

 だけどこれだと薬物の売買という不法行為をしても税金を払えば残りは自分の金で自由に使うことができることになってしまいます。

 これに対しては、刑法第19条に、没収刑に関する規定があります。これは、犯罪行為に使ったものや、犯罪行為によって得た報酬など、一定のものは国が没収できるという規定です。結局、犯罪の対価という不法な利益の保持を、国は許してはいないのです。先ほど薬物の対価は民事上有効に保有できると書きましたが、刑事上はこれを許しません。

 これで社会正義が実現できるということになります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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