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 大晦日前日の12月30日に「舟歌」「雨の慕情」などで演歌の女王と称された八代亜紀さん、年が明け元旦にNHK紅白歌合戦に3度も出場した冠二郎さん、11日には「ありがとう…感謝」などのヒット曲がある小金沢昇司さんと悲しい訃報が続きました。

 突然の死は、残された家族には悲しむ時間もなく諸々の手続きに追われ、大騒ぎとなります。亡くなって10カ月後には相続税の申告期限がくるからです。家族で相続に向き合わないと、想像以上の時間と労力を要することになります。

 最近では個人情報をすべてパソコンの中に入れておくことも多く、パスワードがわからなければ、関係連絡先や資産、負債の状況もわからず、葬儀から遺産分割協議までが難航することもよくあるそうです。

 預金口座がどの銀行にあるのかさえ分からなければ、銀行や郵便局に直接聞いて残高証明書と取引明細書を発行してもらわなければなりません。

 もしネット銀行を利用していれば、探し出すのはさらに困難となります。ネット銀行では最初から通帳が発行されないことがほとんどであり、さらに窓口もないため、履歴等はパソコンやスマートフォンを確認するしかありません。いざ相続の段階になって残された家族が口座の存在を探し出すのは、想像以上の時間と労力がかかってしまいます。最近ではデジタル資産に関する同様のトラブルが急増し、専門業者にパスワードを解除してもらうよう依頼するケースも増えています。デジタル資産に関していえば、ネットバンキング、ネット証券、暗号資産、各種サブスクリプションまで、デジタルによる資産の管理運用は多岐にわたっています。

 そして夫の死後、死亡の事実を知った金融機関はすぐさま口座を凍結します。生活費として妻が使っていた口座は、身内だとしても一切引出しができなくなってしまいます。口座の凍結は相続財産をはっきりさせると同時に、一部の親族が勝手に預金を持ち逃げしないようにするための措置であり、死後にゆっくり名義変更手続きをすればよいというわけにはいきません。

 凍結を解除するには、相続分を決めた後に各相続人名義の口座に相続分を振り込んでもらうための名義変更手続きが必要になります。

 いままで毎日一緒に暮らしてきた家族が、ある日突然いなくなるなど、誰もそんなことを想像したくないはずです。しかし一旦死亡という事実が生じてしまうと、遺族は相続や身の回りの整理など多くの難題が次から次へと現れてきます。期限なども迫られることになり、冷静な判断ができるとは限りません。元気なうちに家族で相続に向けた準備をしたほうが賢明と思われます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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