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 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、韓国の文在寅大統領との会談で「日本との対話の用意」を伝えることで中国、韓国、米国に続き全方位で“修好外交”を展開する姿勢を見せています。国際社会の制裁網の揺さぶりとともに、日本から巨額の支援を引き出し、経済再建の起爆剤にする思惑もにじみます。

 「安倍は『拉致』問題まで持ち出し、制裁・圧迫を哀願した」。北朝鮮の党機関紙、労働新聞は、トランプ米大統領に米朝首脳会談で拉致問題を取り上げるよう求めた安倍晋三首相をこう批判し、「今のように振る舞うなら、平壌に通じる道に自ら高い壁を築く結果を招く」と主張していました。

 1月の金委員長の対話攻勢以降、北朝鮮メディアは韓国非難を抑え、安倍政権への非難が突出して目立っていました。北朝鮮は、トランプ氏に最大限の圧力維持を呼びかけてきた安倍首相が対話攻勢を進める上で最大の障壁の一つだと熟知しており、それだけ日本を意識している証左といえます。

 金正恩政権発足後、最初に本格的外交工作を仕掛けた対象も日本でした。2014年にはストックホルム合意で日本人拉致被害者の再調査に応じたことは記憶に新しいです。当時、調査を受け持った機関が対日利権を見越して貿易事業所を拡張する動きも伝えられました。調査は経済的な恩恵が狙いなのは明らかでした。

 日本人配偶者らの帰国や日本人遺骨の返還など人道問題でお茶を濁そうとする北朝鮮と、拉致被害者の帰国を最優先する日本の認識の差は埋まらず、16年に合意は事実上破綻します。北朝鮮高官は昨年、合意は「既になくなった」とし、拉致問題に「誰も関心がない」と主張する一方、他の人道問題には「取り組む用意がある」と述べました。今回も日本との対話に応じても“拉致外し”をもくろんでくる疑念は拭えません。

 半面、文氏は日朝間の対話の橋渡しに意欲を示しており、対話攻勢に日本も巻き込めば、韓国や中国が制裁を緩める口実にもなりかねません。金委員長にとって対日交渉で支援を引き出せなくとも制裁網を崩せれば、大きな成果となります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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