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 近年になり、金密輸の摘発件数が加速度的に増加しています。全国の税関当局が2016年7月から2017年6月までの1年間に摘発した金の密輸事件は467件で、わずか3年で60倍ほどに激増しています。

 なぜ短い期間に金の密輸がそこまで増えたのでしょうか。その理由は、2014年に実施された消費税の8%の増税があります。金の価格は世界共通ですが、日本国内で売買しますと消費税がかけられます。例えば、客が持ち込んだ1億円分の金塊を国内の貴金属店が買い戻そうとすると売り主に対して消費税8%を上乗せした1億800万円を支払わなければなりません。これを踏まえて、国外から日本に金を持ち込もうとすると、税関であらかじめ消費税8%分を納めることが義務付けされています。税関で納めた分と売却時に得た分で差し引き0になる計算です。

 しかし密輸すれば税関を通らないために、消費税分を納める必要がありません。そうして持ち込んだ金を国内で売却すれば消費税分が丸々儲けになります。

 これまでは密輸の主役は長く覚醒剤でしたが、増税以降、完全に金が取って代わりました。それを踏まえて最新の税制改正では、これまでの金密輸に対する罰金は「1千万円以下」であったところ、密輸によって脱税された額が100万円を超える時には脱税額の10倍を罰金として科する内容を盛り込みました。

 1億円の金を密輸して800万円の儲けを得るケースでは、従来なら最大でも1千万円の罰金で済んでいたところ、今後は8千万円を科されることになります。

 来年10月に消費税が10%に増税されますと、密輸で得られる利ザヤはさらに大きくなります。国としては罰則の強化でこれ以上の密輸を防ぎたいところですが、今後の効果を期待したいものです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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