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 SNS全盛のこの時代、社員が何らかの問題を起こしてしまうと、あっという間に悪評が会社にまで飛び火してしまうことも珍しくありません。とはいっても「社員の不祥事は会社の不祥事」というのはモラルの話であって、個人の罪はあくまで個人が償うべきものです。

 ところが税の世界では、社員が犯した犯罪について、会社が責任を問われるケースが多々あります。社員による会社のお金の使い込みがそれで、社員による横領・着服があった場合、国税は着服分を「申告漏れ」として、社員ではなく会社に対して加算税を課すことが「通常処理」となっています。

 例えばある大手のゼネコンでは、社員が下請け企業に対して建設工事費などを勝手に水増し請求させ、差額分を現金で受け取って着服していました。4年間で約4600万円を着服し、私的に使っていたといいます。

 これに対して国税局は、「実態としては協力会社に支払われていないため、経費として認められない」と申告漏れに当たると認定。さらに意図的に所得を圧縮したと「仮装・隠蔽」に該当するものとして、加算税のうちで最も税率の高い重加算税を課しました。追徴税額は計約4900万円です。

 また過去にもテレビ局で社員による着服が発覚して仮装・隠蔽を伴う所得隠しとして認定された例や、元社員による9億円の着服が税務調査で発覚して、会社が重加算税を含め2800万円を追徴された例があります。会社のあずかり知らぬところで社員が着服した金額に対して、会社が所得を「仮装・隠蔽」したと判断された例は数えきれません。

 社員に着服された会社は犯罪被害者といえますが、税金の世界では管理不行届きの共犯者として扱われます。普段からのチェック体制を整備しておかないと大変なことになります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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