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 去年成立した改正民法では、これまでの相続の形を大きく変える見直しが多数盛り込まれました。そのうちの一つが、介護などで貢献した親族が金銭を請求できる権利の創設です。法定相続人でない者であっても、生前に介護などで特段の貢献をしたと認められれば、遺産分割の際に一定の金銭を「特別寄与料」として要求できるようになります。

 これまでも、法定相続分以上に何らかの縁があった時に、貢献度を取り分に反映できる「寄与分」の制度はありましたが、対象はあくまでも相続人だけで、代襲相続などの例外を除き、配偶者、子、両親、兄弟姉妹だけに限られていました。例えば、家族介護の現場では、長男の嫁が両親の介護をするケースが多くみられます。しかし、今までは、このような貢献は遺産分割に反映できず、そもそも法定相続人でない長男の嫁は遺言などがない場合、1円も相続を受ける権利がありませんでした。

 少子高齢化が進むなかで家族介護がさらに増加し、介護負担が大きくなっていくことから、改正民法では、こうした相続人以外の介護貢献者の権利を拡大する見直しが盛り込まれました。

 導入される特別寄与料は、これまであった「寄与分」の対象範囲を法定相続人以外の親族にも広げています。具体的に貢献度をどのように評価するかは「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮」して家庭裁判所が決定します。従来の寄与分にならって言えば、介護費用や生活費補助など実際に負担した実費計算が原則になるかもしれません。しかし介護することで減った本業の収入の証明は難しく、どこまで寄与分に反映できるかは不透明です。

 もし自分が介護を受ける身で、世話をしてくれた人に感謝の気持ちがあるのなら、譲りたい財産を遺言などではっきり示しておくことが一番だと思います。この改正民法は2020年7月までに施行されます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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