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  災害や盗難などの予期せぬ被害を受けた時には、「雑損控除」という被害者救済のための措置が使えます。「差引損失額-総所得金額等×10%」か「差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円」のうちいずれか多い方の金額を所得から差し引けるもので、震災から横領まで困った人を幅広く救ってくれる制度です。

 ただし、本来なら雑損控除がすんなりと認められる「盗難」について、適用が極めて難しいケースがあります。それは、子供や兄弟など親族による犯行のときです。

 親族から金品を盗む行為を刑法では「親族相盗」といいますが、この親族相盗は窃盗であっても、無罪もしくは刑が免除されるといった特例措置が設けられています。家族や親族といった特殊な関係においては、一般的な窃盗と同様に扱うのはおかしいという考えによります。

 しかしこれを悪用すれば、本当は同意の上での受け渡しであるにもかかわらず、盗難扱いにすることで贈与税を免れてしまいます。

 そうした事情もあり、親族相盗では雑損控除が認められにくくなっています。ただし、親族とは言え警察に被害届を出しており、犯人に返還を求めている証拠があれば、雑損控除が認められることもあるでしょう。

 なお、雑損控除の対象になる範囲には、詐欺と恐喝は入りません。自分がしっかりしていれば防げる被害で、「予期せぬ被害」といえないからです。

 詐欺のやり口がどんどん巧妙化する現代社会において「やられたほうにも非がある」という考えかたは、前時代的な見方ではありますが、今のところは自分の身は自分で守るしかありません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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