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今年、高視聴率を維持したNHK連続テレビ小説「虎に翼」では、日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだ一人の女性の実話に基づくオリジナルストーリーが描かれていました。民法の成立背景についてまだ記憶に新しい方も多くおられると思います。この民法の中には「相続」という規定があり、人が亡くなると法定相続人として条文の中で決められた人に、自動的に財産が移ることになっています。

それは少なくともその人が生存している間は、財産はその人以外の誰のものでもなく、相続人と呼ばれる人たちが直接の権利を持つものではありません。

ところが世間の多くの人たちは、なぜか相続人には権利があり相続の主役は相続人であるというような錯覚をもってしまっているようです。その錯覚が様々な問題を引き起こすのですが…。

今の相続制度ができたのは1947年。日本国憲法が施行された年であり、その後77年が経過しても特に大きな改正もないまま現在に至っています。

しかし時代の変化により、大きく常識は変化しています。

 例えば、民法が成立した昭和22年の常識では

 

  • 人は必ず一定年齢になれば結婚する
  • 夫婦は平均4人の子を作る
  • 平均寿命は60歳未満
  • 資産は金銭と不動産くらい
  • 株式会社は全て大企業
  • ほぼ外国とは無関係に暮らせる
  • 温かくて優しい共助的な社会環境

 

しかし今では

 

  • 結婚で入籍や性別は気にしない
  • 子のない夫婦は珍しくない
  • 平均年齢は80歳を超える
  • 仮装通貨やFXの財産の存在
  • 中小企業が300万社も存在する
  • 国際結婚や海外資産取得が日常化
  • 「コンプライアンス」をうるさくいう社会
  • キャッシュレス化やペーパーレス化した社会
  • 代理母の存在

 

この状況下では、民法の想定された社会の限界を大きく超えてしまっています。

昔の相続は、サザエさん一家のような家族が典型的なモデルで、60歳くらいの親から30歳くらいの子に財産が渡り、子たちは皆が仲良く話し合って財産の行く先を決めました。今とは全く状況が違うのです。例えば、寿命が長くなるにつれ被相続人は認知症になる可能性が極めて高くなり、また権利を主張する相続人も増えて裁判に発展する例も後を絶ちません。民法を社会に適したものにしないと、相続制度そのものを維持することが困難になりつつあります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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