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 孫を養子にすることは、相続上、多くのメリットがあります。孫が養子として法定相続人となれば、1人当たり相続税の基礎控除額が600万円増え、同様に生命保険金の非課税枠500万円、死亡退職金の非課税枠も500万円増えます。これらの非課税枠を活用できれば課税対象となる相続財産を単純に1600万円圧縮でき、圧縮したことで相続税率が下がれば、より大きな負担減が見込めます。

 また孫のままであれば将来的には子から孫への相続で再び相続税が課されますが、孫養子として財産を渡しておけば、相続税の負担を一代飛ばせます。さらに孫は代襲相続などの例外を除けばそもそも法定相続人でないため、確実に孫に遺産を渡したければ、遺言で指定しておくか、養子縁組をすることが求められます。ほかにも、多くの相続対策は何年も前から計画的に行うことが求められる中で、養子縁組は比較的簡単な届出で受理日からすぐ効力を発揮します。

 養子縁組を使った相続対策については、相続税法の基本通達63条の2で、相続税の負担を不当に減少させるためと税務署が認めた養子については法定相続人から除外するという規定があります。そのため孫養子による相続対策も否認されるリスクはゼロではありませんが、実際には何をもって不当であるかを線引きするのは困難で、これまで同規定によって孫養子が否認された例はありません。

 さらに2016年には、遺産相続をめぐって孫を養子にした男性の養子縁組が有効かどうか争われた裁判で、最高裁は「たとえ節税目的があっても、養子縁組をするという本人の意思が否定されない限り、ただちに縁組は無効とはならない」と判示しました。この判決により、孫養子を使った相続対策は司法の「お墨付き」を得たことになります。

 ただし孫養子を使った相続対策は、それ以外の相続人の反発を招き、「争族」トラブルに発展する原因となるかもしれないことは押さえておかなければならないでしょう。相続人が増えることは、それぞれ相続人の取り分が減ることを意味します。生前に納得いくまで話し合っておくか、でなければしっかり遺言を作成しておかなければなりません。

 また孫養子は、法定相続人として扱われるものの、親を亡くした代襲相続人でない限りは、相続税額が20%上乗せされる「2割加算」の対象となります。遺産の額によっては、孫養子で得られる税負担の軽減効果よりも2割加算で課される税負担が上回るということもあり得ますので、利用を検討する際には両者の税負担を比較検討することが重要となります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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