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  相続税には、生前贈与の「持ち戻しルール」というものがあります。相続発生までの3年間に行われた生前贈与については、贈与ではなく相続によって得た財産として扱い、贈与税ではなく相続税を課します。このルールにより、死期を悟ってからの駆け込み贈与は無効になります。

 相続税と贈与税では贈与税の方が税率は高くなりますが、贈与は相続財産全体の減少につながり非課税特例も数多いことから贈与を繰り返すことにより相続税の節税効果が期待できます。仮に相続発生直前の贈与を認めると、「相続税で取られるよりは」と駆け込み贈与をする人ばかりになってしまい、税収が大幅に減少することになるので、相続税法の3年持ち戻しルールが規定されています。

 なお「相続税には」と限定したのは、3年持ち戻しルールは税法上の規定だからです。民法には違った持ち戻しルールが存在します。民法上の持ち戻しルールは、特定の法定相続人への生前贈与があった時に、「遺産の前渡し」があったとして、その分を遺産に合算して遺産分割や遺留分の算定を行うというものです。民法においては3年どころか何十年前の贈与であっても対象とするという恐ろしい制度でしたが、さすがにやり過ぎとの声が多かったので、2018年改正民法により、相続前10年以内の生前贈与のみ持ち戻しの対象とするよう改められています。

 もっとも10年以内の贈与が対象だったとしても期間が長いことに変わりありません。そのため、民法の持ち戻しルールについては、遺留分に関する民法特例、いわゆる「除外合意」を使うことで、ある程度の問題の解消が期待できます。この特例は、相続に関わる全員の同意があれば、ある財産を遺留分の対象となる基礎財産から外すことができるというものです。もちろん遺産を1円でも多くもらいたいのが人情ですから、相続人全員の同意を得ることは簡単な話ではありません。

 なお税法、民法ともに、20年以上連れ添った配偶者への贈与については、持ち戻さなくてもよいとする優遇制度が設けられています。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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