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皆さま、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。去年は、コロナ禍による感染拡大に関するニュースが新聞紙面のほとんどを埋め尽くしました。失業や所得減の影響は、非正規雇用や低所得層に集中することになり、コロナ前からの雇用・所得格差がさらに広がったとみられます。このような格差是正に一定の効果を波及させるのが相続税の課税です。この応分の負担を強いることにより、格差拡大を防ぎ、社会保障を充実させることを目的とします。

とはいえ、コロナ禍の影響は不動産価格にも影響しており、相続財産が不動産を大きく占める場合には、現金により税金を納められない人が増えることが予想されます。実際バブル崩壊時には、相続税を不動産や株式などの物で納める人が急増しました。コロナ禍でも相続税の物納を選択せざるを得ない人が増えそうです。

相続税は金銭で一括納付をするのが原則ですが、どうしても現金で一括納付をするのが難しければ一定の条件を満たせば最大20年の延納(分割払い)が認められています。そしてそれでも納付が困難であれば、不動産や有価証券などの「物」で納めることが認められています。あくまで現金→延納→物納という順番で検討がなされるということです。

物納の許可を受けるためには、以下の要件を全て満たさなければなりません。

 

①期限内に申告書を提出すること

②延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること

③申請財産が定められた種類の財産であり、かつ、定められた順位によっていること

④物納適格財産であること

 

物納する際の「物」には順位があり、第一順位は不動産、船舶、国債証券、上場株式など、第二順位には非上場株式、第三順位には動産と規定されています。

また相続財産の中に同順位の物納財産が複数あるときは、「物納劣後財産」と呼ばれる転売しにくい不整形地などは後回しになります。

この相続税の物納は予想以上に申請件数が少なく、2019年度は全国で物納はわずか61件でした。ただ、新型コロナウイルスの感染症拡大による経済状況の悪化に伴い、今後は相続税を不動産や株式で納めようと考える人々が増えることが予想されます。

昭和のバブル崩壊では、バブルで膨らんだ地価が一気に下落し、相続税路線価が地価を上回る逆転現象が起こりました。さらに国税庁が評価水準を公示価格の8割へと引き上げたことで、相続税評価が時価を大幅に上回る「逆転物件」が大量に発生して売買取引は停滞しました。その影響を受け不動産を現金化できない人が続出し、年間400件程度に過ぎなかった物納での申請件数は、12,778件まで急増するに至りました。

日本では、相続人が取得した相続財産の約4割を不動産が占めます。相続財産の一部を売却しないと相続税を支払えない人は稀ではありません。物納は決して好ましい選択とは言えませんが、バブル時と同様、路線価と市場価格の逆転現象が起きて現金で払うことに苦しいときには、もう一枚のカードとして制度を使うしかありません。

          

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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