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  親や配偶者が死亡したときには、相続人は悲しみに暮れる中でも様々な行政手続きを行わなければなりません。不動産登記の変更や相続税の申告、銀行口座の解約をするには、かつては大量の戸籍書類一式をそろえて、相続対象となる不動産を管轄する各自治体の法務局や金融機関ごとに提出する必要がありました。

 相続不動産が各地に点在しているようなケースでは、煩雑な手続きがハードルとなって資産価値の低い土地の名義人を変えないままにしていることも多くみられ、社会問題化する所有者不明土地問題の原因ともなっています。

 こうした問題を解消する為2017年にスタートした「法定相続情報証明制度」では、全国に400ヵ所以上ある登記所のいずれかに相続人全員分の本籍、住所、生年月日、続柄、法定相続分などの情報を一度そろえて提出すれば、法務局が偽造防止措置を施した証明書を作成し、相続人には証明書の写しをもらえるようになりました。当初は不動産登記のみでしか利用できなかったのですが、その後、相続税の申告書に添付する資料としても使え、さらに金融機関によりますが預貯金の名義変更や解約にも利用できるようになりました。

 作成に当たっては決まった書式などなく、被相続人と法定相続人全員の関係が一目でわかるよう相続人自身が一覧図を作成し、それを法務局で確認してもらう形となります。この際に、それぞれの住所は任意記載となっているものの、証明書を様々な手続きで利用していくことを考えると、住所もあった方が便利だと思います。

 ただ注意したいのは、証明書は戸籍謄本に基づいて内容の正しさを保証するものなので、戸籍のない人、つまり日本国籍を持たない外国人などが関係者にいる時は、この法定相続情報証明制度を利用することは出来ません。

 また相続人のなかに相続放棄をした人がいても、証明書の一覧図では他の人同様、通常の法定相続人として記載されてしまうため、証明書を使うことは出来なくなります。

 よって、相続放棄が終わった後で他の相続人が相続手続きをする際には、家庭裁判所で申述した旨の書類(裁判所からの通知書や相続放棄申述受理証明書)を併せて提出することになります。

 

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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