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 相続登記の義務化まで約1年余りに迫っています。相続による取得を知ってから3年以内の登記申請を義務付け、正当な理由なく怠った時には10万円以下の過料に科されます。しかし法務省の調査によりますと、6割を超える人々が義務化されることを知らないことがわかりました。義務化への対策を怠れば子や孫が相続するときに複雑さや困難さ、コスト負担が増すことになりかねません。 

 法務省が発表した相続登記の義務化についての調査結果によりますと、『全く知らない』と答えた人が43.1%に上り、「聞いたことがあるがよく知らない」の23.6%を合わせると、66%の人が制度を知らなかったことになります。来年4月からスタートすることを考えますと、66%が知らないという結果は、とてつもない大きい数字と言わざるを得ません。

 相続登記は相続により不動産を取得した時に不動産名義を相続人に変更することですが、これまで相続で譲り受けた不動産を登記するかどうかは任意であったので、登記はそれぞれの相続人の判断に委ねられていました。そのため相続人が固定資産税などの税負担を避けたり、土地管理の煩わしさから放置したりするケースが多く生じていました。

 国の調査によりますと、国が保管する全ての登記簿の実に2割が所有者不明土地であることが明らかになっています。所有者が不明である土地の内1/3は転居先などの住所変更が届けられていないことが原因で、2/3は既に亡くなった人の名義になっていました。

 相続登記が行われなければ登記簿上の名義は死亡者のままとなり、そのまま放置され続けて世代交代が進めば、法定相続人はネズミ算式に増えてしまいます。

 こうした状況を受け、国は2020年に土地基本法を本格改正し、土地所有者の責務を明確化しました。その総仕上げとしての民法や不動産登記法の改正も行われています。来年4月から相続による取得を知ってから3年以内の登記申請を義務付け、正当な理由なく怠った時には10万円以下の過料が科されます。

 今後相続登記をしないままにしておくと、不動産売却や担保設定ができないことになります。仮に買い手が現れて相続人と買い手との間で不動産の売却契約まで取り交わしたとしても、被相続人から買い手に直接所有権の移転登記をすることはできません。売買を完了させるには、被相続人から相続人に所有権を移しておく必要があります。当然、引き継いだ不動産を担保にして金融機関から融資を受けるにも、資産の登記は不可欠です。

 登記を放置したままだと、時間が経過することで、権利関係が複雑化してしまいます。相続が2回以上重なると、誰が相続人となるのか、その調査だけで相当の時間がかかり、相続登記の手続費用や手数料も高額になります。子や孫に想定外の負担を生じさせることも否定できません。

 また、相続人に借金のある人がいると不動産が差し押さえられてしまう可能性もあります。相続人にお金を貸している債権者は、債権を守る為に代位登記という相続人の代わりに行う登記をし、不動産を差し押さえることができるためです。

 不動産登記は、第三書に権利関係を証明するための唯一の手段です。万が一、土地に無断占有者が現れた場合には、その退去を求めるにあたって登記名義人が被相続人のままでは、権利関係の証明は不可能になります。退去要求に手をこまねいていれば、無断占有者が「時効取得」を理由に登記申請してしまう恐れもあります。

 さらに登記を放置することで相続人が高齢化していけば、認知症発症のリスクが高まります。相続人の判断能力がなくなれば、成年後見人をつけないと遺産分割協議に参加することができなくなります。仮に判断能力がない人が参加した遺産分割協議書があったとしてもその協議書は無効となります。

 手続的には、遺産分割協議書を作成することになるのなら、不動産をどうやって分けるかを記載し、相続人全員に実印を押してもらい、全員分の印鑑登録証明書も必要になります。また亡くなった人の戸籍謄本、住民票の除票、固定資産評価証明書などを用意し「登記申請書」を書くことになります。

 

 

 

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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