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 サッカー界の英雄として知られる元アルゼンチン代表ディエゴ・マラドーナ氏が去年11月25日に60歳でお亡くなりになりました。マラドーナ氏の急逝はサッカー界を超えて全世界に衝撃を与えましたが、今関係者の頭を悩ませているのが他ならぬ相続問題です。マラドーナ氏はサッカー界きっての「艶福家」でもあり、世界中に認知問題を抱えた子がいるのです。さらに約93億円に上る資産は全世界に散らばり、数々の金銭トラブルも発生していたようです。

 相続人として真っ先に名が上がるのが、2003年に離婚した元妻のクラウディアさんとの2人の娘、ダルマさんとジャンニーニャさんなのですが、ここにきて2人とマラドーナ氏の生前の不和が報道されています。2016年にクラウディアさんが財産分与を求めて裁判を起こした際に2人の娘も支援していたことから、マラドーナ氏が2人を相続対象から外す考えを示していたというのです。アルゼンチンの法律でも遺留分に当たる親族の取り分は保障されているものの、もしマラドーナ氏の「遺言」などが明らかになった場合には、全額彼女たちに渡らない可能性もあります。

 さらにマラドーナ氏は生前に、多くの「子の認知訴訟」を抱えていたことでも知られています。実際にこれまでも、1980年代にイタリア人歌手の女性との間にもうけた息子、晩年をともに過ごした元恋人との娘、別の元恋人との間に生まれた息子と、3件を認知しています。代理人によれば、薬物のリハビリで滞在していたキューバにも少なくとも3人の子供がいるといいます。

 さらにマラドーナ氏の死去を受け、「神の子の子」を名乗る人物が新たに2人現れています。それぞれ数年前に父親がマラドーナ氏であると母親に知らされたと言い、マラドーナ氏の代理人にDNA検査への協力を求めましたが拒否されています。法廷闘争に訴える姿勢を示していますが、既に認知されている子たちは検査への協力を断固拒否する方針で、これまた両者の対立は収まる気配がありません。

 マラドーナ氏の遺産は、アルゼンチン国内だけでなくアメリカ、イタリア、UAE、中国、ベラルーシなどに分散していて、しかも各地で金銭トラブルが起きていたようです。様々な理由でマラドーナ氏に対して手続きを行った債権者らが遺産分割に関与するとなると、相続争いに加わる人数は50人以上になりそうです。

 日本の法律では、隠し子の相続については、原則として「認知していれば権利があり、していなければない」ルールになっています。かつては婚外子の取り分は摘出子の1/2というのが定説でしたが、2013年の最高裁判決により、今では婚外子でも認知さえされていれば、摘出子と同じ法定相続分を持つようになっています。

 家族の手前もあって隠し子を認知しづらいけどなんとか財産を残してあげたいと思うのであれば、遺言で非摘出子を認知する「遺言認知」という制度もあります。遺言執行者が実行することで、自分は死んだが隠し子は認知され、摘出子と同じ権利を持つことができます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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