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 財産を受け継ぐ法定相続人は死亡した人の配偶者や子供、親、兄弟姉妹といった血族関係に限られ、いわゆる愛人には原則として相続権は発生しません。愛人とは「相手が結婚していることを認識したうえで交際をしている者」を指し、特定の恋人関係や単に籍を入れていない「内縁」とは異なり、法律上の保護に値しない「不貞」の存在とされているためです。

 ただ愛人であっても遺言さえあれば遺産を相続することは可能です。もちろん「愛人に財産を譲る」といった遺言でも本妻や実の子供など法定相続人には「遺留分」と呼ばれる権利があるため、その請求がなされた時は愛人が全財産を相続することは出来ません。これは遺言書の内容は法定相続よりも優先されるという基本ルールと同時に、血縁関係にある遺族が路頭に迷うことがないようにする法律上の配慮です。

 愛人関係の相続でややこしいのが、被相続人に愛人との間の子(非嫡出子)がいるときです。非嫡出子に相続権があるかどうかは、その子を父親が認知しているかどうかで決まります。認知していれば法定相続人として認められ相続権が発生し、遺産分割協議書も非嫡出子の合意なければ協議は進みません。

 逆に非嫡出子が認知されていなければ、「実子」であっても法定相続人とは認められません。非嫡出子の存在が判明したときは、その子の戸籍で確認することになります。

 戸籍上の「父」の欄に被相続人の名があれば認知されていることになります。また、遺言書で非嫡出子を認知する「遺言認知」という制度もあり、遺言執行者が実行することで非嫡出子の認知が完成します。

 なお、「俺が死ぬまで愛人でいろ。そうすれば死後の遺産をやろう」といった遺言を残す人もいますが、これについては民法上の公序良俗に反するものとして、遺言書を無効とした判決が1986年に最高裁で出ています。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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