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 ロシア軍のウクライナ侵攻によって株式などのリスク資産を売却して、安全資産と言われる金を買う動きが強まっています。株式投資は企業の業績だけでなく、経済的もしくは地政学的要因からも価格が大きく変動することに加え、経営破綻などで会社そのものがなくなり価値がゼロになる恐れもあります。その点、金には実物が存在し、それ自体に価値があることが魅力で、しかも世界中どこでも同価値で換金でき、燃えてなくなることもありません。また希少価値が担保されていて、供給過剰による価格下落の可能性も少ないことから、先行き不透明感が強く、市場が不安定の時には金市場に金が集まりやすくなります。

 しかし一方で、プロの間では「金を売り時」との声もあります。

 過去30年の金の最安値は1999年の1g=962円であったため現在は8倍まで膨れ上がっています。金は80年代、90年代は長期下落に陥り、2000年代、2010年代と緩やかに上昇。2020年のコロナ禍にようやく80年の最高値を更新しました。長期的にはこのまま金が上がり続けるとは限らない点は認識しておく必要があります。

 また金の売買で利益が出た場合は、所得税が課税されます。営業目的で継続的に金の売買をするのでなければ「譲渡所得」になりますが、譲渡所得の計算は、金を保有していた期間が5年以内なら50万円を超える部分が課税対象となります。保有期間が5年超ならばその譲渡所得を半額にできるので、長く持っているほうが断然有利になる点も押さえておきたいところです。

 金の価格が上昇すれば、当然ながら国税当局が目を光らせます。2012年からは200万円を超える地金を購入したときは、販売業者は税務署に「地金等の譲渡の対価の支払調書」の提出が義務付けられています。当局には情報が筒抜けになっていることをまず理解してください。価格が高騰している金を所有している高所得者層は、当局の絶好のターゲットとされるでしょう。

 国税当局では、2017年7月から全国の国税局に富裕層プロジェクトチームを設置して富裕層の金の流れに監視の目を光らせています。調査では現金の流れを細かくチェックします。対処するには、記録を全て残し、資産隠しによる脱税を疑われないよう万全の態勢で臨んでください。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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