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 皆さん、不倫の代償がいかに大きなものかは言わずと知れたものですので、ここでは税金の話をします。

不倫がばれて離婚に発展すれば、慰謝料や財産分与は相当な額に上ります。この場合、慰謝料を受け取る側は、精神的損害を受けたとして税金は全額非課税扱いとなります。ただし非課税扱いされるのは「社会通念上それにふさわしい金額」とされており、あまりに高額な慰謝料は過大だとして課税される可能性はあります。

また離婚時に分与する財産についても、財産を分けるだけで新たな財産の取得ではないことから、原則として所得税も贈与税もかかりません。これは現金だけではなく不動産、株式であっても同様の扱いとなります。ただし、これらについても慰謝料同様、分与された財産が常識からはずれた過大なものであると税務当局が判断しますと、その多すぎる部分に贈与税が課税されてしまいます。おおむね「夫婦の財産の1/2」までであれば課税されない可能性が高くなりますが、実際にはあくまで夫婦の資産状況や離婚の原因などで総合的に判断されます。

伊丹十三監督の映画『マルサの女』では、山崎努演じる会社経営者が内縁の妻について語るシーンがあります。

「もう少し情が移ってきたら結婚して、本当に愛情がわいて財産を分けたくなったら、離婚するんだよ。離婚して慰謝料をガバーッと払うの。慰謝料には税金かかんないからね。そうやって財産を移しといて、また彼女と結婚するの」

この言葉に対しては主人公が「財産を移した途端に彼女が逃げちゃう可能性もありますね」と厳しいツッコミを入れるわけですが、男の言うとおり、離婚に伴う慰謝料には原則として税金がかかることはありません。これは不倫相手から得た慰謝料なども同様の扱いで、損害賠償金や慰謝料などによる収入は原則として非課税とされています。

ただし男が計画を実行したとして、思惑通りに相手に財産を移せるかといえば難しいかもしれません。慰謝料のうち非課税となるのは、あくまで「社会通念上それにふさわしい金額」のみとされていますので、心に受けた傷を金額に換算するのは非常に難しいとはいえ、あまりに高額な慰謝料は過大だとして課税される可能性があります。しかもこの場合、再婚するわけですから、税金の時効がくるまでは計画性ありとして課税されてしまうでしょう。近頃世間を騒がせている芸能人や政治家たちは大変な財産持ちのため、もし離婚に発展すれば莫大な慰謝料が発生するでしょうが、それでも限度はあるということになります。

分与で得た不動産については、取得税は免除されるものの、改めて登記を行う際の登録免許税は免除されません。また、取得以後の固定資産税の課税義務までは免れません。

財産を受け取った側に原則として課税義務が生じない一方で、財産を渡した側については事情が異なります。住宅や土地などの不動産を分与によって渡したときには、譲渡所得があったものとして所得税が課されることになります。財産をタダで手放した上に課税までされるというのだからなんとも無体な話ではあります。

 

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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