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 高齢化社会の進行に伴って、認知症患者の増加が社会問題となりつつあります。老々介護も珍しくなく、親が亡くなったときは子もすでに高齢で、なかには認知症を患っているということも少なくありません。こうしたとき、遺産分割にはどのような問題が生じるのでしょうか。

 相続人の中に認知症で判断能力が全くない人がいて、遺言書で財産の分け方が指定されていない場合、遺産の分け方は2通りあります。法定相続分通りに分けるか、あるいは成年後見人を立てて遺産分割協議をするかです。相続人が認知症だからといって、その子(亡くなった人の孫)など推定相続人だけで遺産分割協議書を進めることは認められていません。

 成年後見人をつけるのが面倒だからと法定相続分通りに分けてしまうと、小規模宅地の特例などの税負担軽減措置のメリットを最大限活用した遺産分割ができない恐れが生じます。また不動産は相続人全員の名義で共有となるので、判断能力がない相続人が一人でもいますとスムーズに処分できないなどの不都合が生じます。

 一方、成年後見人をつけたからといって、自由に遺産分割ができるわけではありません。後見人を交えて遺産分割協議をするケースでは、後見制度が被後見人の保護を目的とするものですので、原則として被後見人の法定相続分を確保する分け方でなくてはならず、完全に自由な遺産分割はできません。また後見制度は一度スタートすると原則的に途中で止めることができませんので、弁護士など親族以外の専門家を後見人につけますと、遺産分割協議が終わった後も被後見人が死亡するまで報酬を支払い続ける必要が生じてしまいます。

 このように認知症を患っている人が相続人にいますと自由な遺産分割はできなくなります。このような事態を避けるため、財産を残す立場の人は、遺言書を作成するなどの生前対策を講じる必要性が高くなります。

 

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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