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 ウクライナ情勢の緊迫化などによる原油や物価高騰、そして追い打ちをかけるように、日米欧の金利差による円安が急激に進み、中小企業の経営を圧迫しています。

このような状況下、岸田内閣は防衛費の増額や「異次元の少子化対策」の財源確保として、矢継ぎ早に増税の銃弾を乱れ打ちする構えです。10月には消費税のインボイス制度がスタートすることで中小企業にとってはさらなる負担増が求められています。

 国民の所得に占める税金や社会保険料などの負担割合を示す「国民負担率」が47.5%に上っています。江戸時代に一揆が起きた年貢率「五公五民」に迫り、中小企業にとってもこれ以上の増税は経営を圧迫しかねません。しかし岸田首相の経済政策は「増税」しかなさそうです。

 昨年末に閣議決定された2023年度予算は、一般会計の歳出総額が114兆3812億円と過去最大となっています。防衛力強化の政府決定を受け、防衛費が急膨張したことによります。今年度から5年間の防衛費を、それまでの27兆円から43兆円に大幅増額されます。歳出削減などで財源をひねり出しますが、それでも足りない1兆円強については「新たな税負担を求める」ようです。岸田首相は「内容と予算、財源を一体で議論する」と再三繰り返し発言していましたが、結局のところ「議論なし」「規模ありき」の増税でした。

 岸田首相肝いりの「次元の異なる少子化対策」でも、政府は新たな財源を増税で賄う意向です。岸田首相は「大前提として、消費税を含めた新たな税負担については考えていない」としながらも、社会保険料などの上乗せ徴収や扶養控除の縮小などによる負担増が仕掛けられています。社会保険料の上乗せ徴収については、国民一人当たり月500円程度の負担増が検討されています。しかし社会保険はそもそも「保険制度」であり、本来健康保険や介護保険のために徴収しているお金です。しかも今後高齢化の進展に伴って、社会保険の財政自体がひっ迫することは不可避です。財務省は「子育て支援で税金を財源にしたいが、世間の反発があるので社会保険料に名前を変えて国民から徴収することにした」のかもしれませんが、社会保険料は給与や年金から天引きされ、海外でいう「社会保険税」に相当するものであり、実質的には増税と変わりないことは明らかです。

 退職金も実質的に増税になりそうです。4月12日に開かれた「新しい資本主義実現会議(実現会議)」の中で、岸田首相が退職所得控除にメスを入れると明言しました。これまでは、勤続20年を超えると退職金にかかる所得税と住民税の負担が軽くなる優遇措置がありましたが、早ければ2026年に廃止されます。実現会議の中では、退職所得控除を巡って大きく分けて2つの見直し案が提示されています。一つ目の案は勤続年数が20年を超えると控除額が増える仕組みを改め、2つ目の案は退職金制度そのものを見直すというものです。

 そして来月には、消費税のインボイス制度が始まります。あの手この手を使いながら、財務省にとって増税の本丸は何といっても消費税率のアップでしょう。消費税は1%あげれば確実に2兆円の税収が増え、景気にも左右されにくい理想的な安定財源とされているためです。

 このほか贈与特例の廃止や公的医療保険、介護保険の自己負担も増やしていくようです。また自動車の走行距離税や森林環境税の導入も検討されています。

 いよいよ増税地獄の足音が確実に近づきつつあります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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