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 来月からいよいよ始まるインボイスですが、税理士はもちろん、企業の経理担当の方も対応に苦慮しているところも多いと思います。混乱しているのは税務当局も同じで、細かく記載事項をチェックすることは基本的にやらないようです。インボイスは所定の事項が書かれた請求書を意味しますので、請求書であっても品目や納品日などが書かれていない請求書は原則としてインボイスには該当しません。このため、現状の請求書もインボイスの記載事項を満たしているのかチェックしなければなりませんが、税務当局は記載事項が多少欠けていたとしても、それだけで消費税の控除を認めないといったことは原則として行わない意向のようです。

 この点、財務大臣がインボイスに係る国会答弁で、「税務調査は脱税などの不正発見のために行われるのが建前であり、細かい記載事項を細かくチェックするような税務調査をインボイス制度がスタートしても目的とはしない」といった趣旨の回答をしていました。同様に国税庁の幹部職員も「インボイスの記載事項が不足していたとしても、他の書類なども確認するなどして柔軟な対応をするように考えている」といった答弁でした。

 実際のところ、インボイス制度がスタートしていない現状においても、法律上は所定の事項が記載された請求書を保存していなければ、その納税者は消費税の控除が認められないとされています。しかし現状「記載事項が不足しているので消費税の控除は認められない」といった指導を、税務当局は原則として行っていません。

実際のところ、クレジットカードの明細は仕入税額控除の要件となる請求書には当たらないと国税庁のホームページには明記されていますが、税務調査ではこのクレジットカードの明細があれば経費を支払った事実関係は分かりますので、消費税の控除についても基本的には認められています。

 逆に記載事項が足りないという理由で問題になった事例としては、請求書に書かれた名義が仮名であるなどの不正取引のケースがほとんどです。このため記載事項の内容につき納税者に指導されることはあるかもしれませんが、不正取引に関係しないものであれば、控除を認めず消費税を追徴するようなことはないと思われます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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