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 相続税で判断が問題になる解釈に「使用貸借」と「賃貸借」があります。使用貸借はタダで貸すことを意味し、賃貸借は有償で貸すことを意味するのですが、土地を評価する際、その土地が貸されていた場合に、使用貸借なのか賃貸借なのかで評価は大きく異なってきます。

 使用貸借はタダで相手側に貸すため、借主自体の権利は弱くなります。この点を踏まえ、使用貸借で貸している土地は、貸主である地主が自分で自由に使っている土地と同じものとして、自用地評価で評価されます。

 一方、賃貸借は借主の権利も認められているため、借地権に当たる部分を控除した金額で地主の土地を評価することになります。

 タダで貸すか有償で貸すかの区分は、一見簡単に見えますが、実務はそれほど単純ではありません。というのも地代が著しく低額であれば実質的にタダで貸していると判断して、使用貸借として取り扱われてしまうからです。この「著しく低額」というボーダーラインですが、一般的にはその土地の固定資産税などの年間の税額の1~2倍程度以下であることを意味し、3倍取れば著しく低額ではないといわれていますが、必ずしも明確ではありません。

 このため、賃貸借として地主の土地の評価を下げたいのなら、固定資産税などの年税額の3倍程度以上の地代とした方がよいとされますが、親が子に土地を貸すようなときには、この程度の金額の地代を取れないことも多々あります。このようなときに押さえておくべきは、地代以外の要件で賃貸借として主張できるような材料を整えておくことです。

 過去の事例を見ると、賃貸借に該当するか否かの判定上、当然ながら地代の水準が最重視されていますが、契約書の有無や地代の金額の算定根拠の明確性なども重視されています。土地の貸付時に不動産「賃貸」契約書をきちんと締結し、賃貸借に係る事項を定めていれば賃貸借と判断される一つの根拠になることは間違いありません。加えて賃貸借で貸すということは基本的に不動産賃貸で儲けることを目的にするはずですから、地代を決める際にも合理的な根拠で決めているはずで、そのような根拠なしで低額で貸すのならタダで貸す使用貸借と大差はありません。

 また、第三者に貸すのと親族などに貸すのとでは、利益供与のない第三者間のほうが賃貸借とみられる可能性は大きくなります。このため、第三者間での貸し借りでは、地代の水準が低すぎる例は別にして、特に指摘を受けないまま税務調査においてはスルーされることも多いと思われます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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