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税務署に対して郵送で提出する申告書は、税務署に申告書の現物が実際に到着した日ではなく、税務署に対して発送した日に提出があったものとされます。このため、多忙な会計事務所の実務上、申告書を申告期限ギリギリに作成し、その日のうちに郵便ポストに投函して郵送して期限内提出とするといったことはよく行われています。

申告期限に1日でも遅れてしまえば、無申告加算税などのペナルティが発生しますので、期限内申告にあたるかどうかは実務上非常に重要です。とりわけ、郵送提出については、郵便局の窓口で提出した場合は別として、ポストへの投函は証拠が残りません。このため、郵送提出の申告書について申告期限後とされた納税者が「申告期限内にポストに投函した」と反論して、裁判等で争われることがあります。

ただポストに投函したタイミングは法律上の問題にはならないとされています。なぜなら原則として封筒に押す「通信日付印」の日付を提出日とみなすと規定されているからです。通信日付は郵便物を受けつけた証拠として、郵便局が郵便を引き受けた日に封筒に押されます。郵便局の窓口受付であれば、受け付けたタイミングで押されますが、郵便ポストに投函した場合、郵便局が回収するタイミングによっては、困ったことに実際に投函した日付と通信日付印の日付がずれる場合があるそうです。

法律はこのような事態があることを想定し、通信日付印の日付を提出日とみなすとしています。このため例えば、ポストに投函したシーンを動画撮影して申告期限の末日に投函したことを証明したとしても、通信日付印の日付がその翌日となっていれば、その翌日に税務署に提出したことになり、期限後申告として取り扱われます。

しかし、みなすと言いつつ、この取り扱いにも実は例外があります。それは通信日付印の日付が不鮮明なときです。不鮮明であれば提出日を特定できませんので、この場合には税務署に到着するスパンから逆算して決めるとされています。例えば距離的に翌日には税務署に郵送されると見積もられるのであれば、提出日は到着日の前日とされます。

このため、仮に郵送提出した申告書について申告期限を過ぎていると指摘された場合には、封筒に押された通信日付印の日付が不鮮明か否かについても担当者に確認すべきです。実務上、封筒まで保存することは多くないため、税務署としてもその日付が鮮明であることを現物の封筒を提示して示すことは難しいです。そうなると、通信日付印が不鮮明であった可能性も否定できないとして、交渉する余地が生じることになります。

 

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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