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安倍晋三元首相の政治資金2億円超を、妻で〝私人〟の安倍昭恵氏が非課税で相続したことが、総務省が公開した政治資金収支報告書により明らかになりました。現行の政治資金規正法では、政治団体や政治資金を親族が非課税で承継することは合法ですが、制度の本来の目的は団体及び資金を政治活動に有効に使うことであり、政治家の親族だけが非課税で相続できるためのものではないはずです。また安倍派(清和研)が推定1億円の政治資金のキックバックをした疑いも浮上しています。

2022年7月8日に安倍晋三元首相は選挙演説中に私怨により銃撃され命を落としました。そして死亡が確認された同日、妻の昭恵氏は安倍元首相が代表を務めていた政治資金管理団体「晋和会」と政党支部「自由民主党山口県第四選挙区支部」の代表に就任しました。その後、晋和会に安倍氏が関係する5つの政治団体から計約1億8千万円が移されていたことが、政治資金収支報告書から判明しています。

昭恵氏が両団体の代表に就任したことがスクープされて以降、「政治資金規正法」を使った相続税を非課税として回避するための工作ではないかと注目されていたなか11月24日に22年度の政治資金収支報告書を総務省が一斉公開し、政治資金の詳細が明らかになりました。

昭恵氏が相続した政治資金は総額2億4550万7576円とみられています。そして襲撃から19日後の27日から12月22日にかけて第四選挙区支部の資金の大半を昭恵氏本人が晋和会へ寄付という形で移転していることが報告書には明記されています。

去年1月31日には第四選挙支部を解散し、その際にも2700万円余の残金を晋和会に寄付をしています。さらに安倍元首相の後援政治団体からも総額5055万円の寄付を受けています。なお第四選挙区支部には一昨年の時点で約3080万円の政党交付金が残っていましたが、例年の2倍以上の人件費や事務所費として使い切られています。

政治団体やその政治資金について定めている「政治資金規正法」に従うと、政治団体は原則として「政治活動を行う者」が持つことができますが、健全な政治活動(公職の立候補等)を目的とした親族でも引き継ぐことができるとされています。

同制度では通常、政治団体から政治団体への寄付金は年間5000万円まで非課税で相続や贈与ができ、1つの政治団体では1個人につき年間2000万円までは非課税で寄付ができます。つまり親族が毎年2000万円を親族の政治団体に寄付していけば、相続税を支払わず自分の資産を譲ることが可能となるわけです。また昭恵氏のように自身が代表を務める政党支部と資金管理団体間での寄付は無制限かつ非課税という特例があり、実態が政治資金の私物化による相続や贈与でも、課税されずに済んでしまいます。

世間を騒がした「森友学園での講演」や「桜を見る会への出席」の際に、昭恵氏は「私人」であるという認識が閣議決定でされています。にもかかわらず特例を使い優遇された政治団体の代表になることを許しているのでは政治資金規正法がザル法であるといわれても致し方ありません。

他の「政治と金」の問題でも同制度の穴はあちらこちらに見られます。神戸学院大の上脇博之教授が自民党の5派閥で政治資金収支報告書へ収入の過小記載の疑いがあると告発した問題について、東京地検特捜部が捜査を始めました。告発によれば2018年から21年で計約4000万円にのぼることを発端に、自民党最大派閥の清和政策研究会(安倍派)や志師会(二階派)による政治パーティー券の売上収入が記載されていなかったことで連日新たな事実が浮かび上がっています。数年間で数億円にのぼるとみられる未記載分収入は、議員へのキックバックとして消えている可能性があると報道されています。

政治資金規正法の規定では政党派閥を含む政治団体は年1回の政治資金収支報告書を提出しなければならないものの、寄付やパーティー券の販売による収入の支出についての規制はほぼありません。これは政治活動の自由を尊重するためとされていますが、実際は政治資金の私的流用は無法地帯になっている状態です。

地盤(政治団体)、看板(親の知名度)、かばん(政治資金)を非課税で相続できる同制度は、世襲議員にとっては極めてありがたい制度です。野党からは闇の深い世襲制議員の多さを抑制する改正法案が去年の臨時国会に提出されました。

野田佳彦元首相は去年の11月22日の質疑で「ここ30年の自民党の総理大臣で世襲ではないのは菅義偉元総理のみ、現在も岸田内閣の約半分が世襲議員であることは本来の民主主義のあるべき姿なのか」と問いかけました。

国民に増税を強行する前に、徹底的な歳出改革と世襲議員のみにオイシイ仕組みである政治資金規正法の穴を塞ぐことが国民の信頼回復には必要なのではないでしょうか。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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