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 相続などをきっかけに、誰も住まなくなったまま放置された空き家が全国で増え続けています。総務省の調査によれば空き家の数は毎年過去最高を更新し続けていて、空き家率はいまや13.6%と7.4戸に1戸が空き家ということになります。また最近ではマンションなど高層住宅の空き家も増えつつあり、安全性や治安の面から社会問題化しています。空き家を持つ側として、何らかの対策をとらなくてはいけません。

 総務省がまとめた最新の「住宅・土地統計調査」によりますと、全国にある空き家の数は846万戸に上り、5年間で26万戸増加しました。最も空き家が多かったのが東京都の31万戸で、次いで神奈川県15万戸、千葉県14万戸と首都圏が上位を占めています。空き家率は25年前には9.8%でしたが、20年前には11.5%、15年前には12.2%と徐々に着実に増えています。

 近年の傾向としては、売却用の住宅や別荘などの2次的住宅の空き家が減少する一方で、賃貸用住宅が増加しています。高度成長期の頃にニュータウンに住み始めたファミリー層が高齢化していなくなり、そうしたマンションが入居者を減らしたままで残っていたりします。また、都市部に土地が少なくなり、共同住宅に住まざるを得ない事情も空き家増加に影響を与えています。土地のない東京都では、全住宅戸数の7割を共同住宅が占め、15階以上の高層住宅が25万戸存在します。

 共同か戸建てにかかわらず、空き家は相続の際に発生することが多く、相続した側から言えば使い道がわからず荒れるに任せている現状があります。そうして空き家は老朽化していき倒壊したり、ごみの不法投棄のたまり場になったりします。

 それでも空き家を所有者が解体せずに放置する理由として、固定資産税の制度上の問題があります。廃屋であろうとなんであろうと家屋が建ってさえいれば、その敷地は「住宅用地」とみなされ、固定資産税が安く済むからです。

 敷地200㎡以下の住宅用地の課税標準額は更地の6分の1となります。200㎡を超えたとしてもその部分は3分の1となり、廃屋でも壊すよりは建てておいた方が税負担は少なく済みます。

 こうした状況を打開するため、国は2014年に、老朽化したまま放置されている空き家に関する問題への国の取組み方針を規定した「空き家対策特措法」を成立させています。空き家の所有者特定に固定資産税の課税情報を活用することや、行政代執行による取り壊しを認めるなど、自治体の権限を強化する内容で、特に危険だと認定された「特定空き家」については、固定資産税の優遇対象から、除外する内容です。

 使い道のない空き家を相続する側としては、所有者として様々な負担を課されるくらいなら、そもそも相続時に登記をしたくないと考えるかもしれません。しかし今後はそのようなこともできなくなる可能性が出てきました。法務省が現在、相続人の登記義務化を盛り込んだ法改正への議論を進めているからです。

 現在の相続登記は任意で、登記を行うかどうかは相続人の判断に委ねられています。相続登記が行われなければ、登記簿上の名義は死亡時のままで、そのまま放置され世代交代が進めば、法定相続人はネズミ算式に増えることが問題視されています。所有者不明土地が増加する要因として、相続人が固定資産税などの税負担を避けたり、土地管理の煩わしさから放置したりするケースが指摘されています。このため制度見直しに当たっては、相続登記の義務化と遺産分割協議の期限設定がテーマとして挙げられています。

 任意となっている相続人による登記を法で義務付け、登記をしなければ罰金を科すことに加え、登記所が他の公的機関から死亡情報を取得できるようにし、最新の登記状況を管理する制度も整備する方針です。

 それに合わせ、登記を希望しない土地については、一定の要件を満たすことで所有権の放棄を認めることも検討していますが、どのような場合に放棄を認めるのか、要件の設定について議論は難航が予想されます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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