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 マレーシアのマハティール政権は、6月1日から、消費税6%を撤廃しました。

 消費税6%は法人税に次ぐ税収源で、税収の約18%に相当します。税収約1兆2000億円がゴッソリなくなることになりますので、かなり思い切った措置ではあります。

 大胆な減税案は、史上初の政権交代のための票狙いのようにも見えましたが、マハティール氏は“次の一手”を打ち出しています。ムダな大型事業の見直しです。

 マハティール氏は「多大な費用がかかり、全く儲からない」として、2026年開通予定の首都クアラルンプールとシンガポール間の約360キロを1時間半で結ぶ高速鉄道計画の廃止を表明しております。事業費は約1兆6500億円ですので、撤廃した消費税6%の1年分を上回ります。

 さらに、マレー半島の東海岸と西海岸の重要港湾などを結ぶ約690キロの東海岸鉄道は既に着工されていますが、マハティール首相は見直しを始めました。

 中国が進める『一帯一路』の主要事業で、事業費は約1兆5100億円です。中国ベッタリだったナジブ前政権が中国の融資を受けて進めてきた事業です。マレーシアは、消費税をゼロにする一方、高速鉄道など大型事業を見直して、財政を健全化させようとしています。「中国ベッタリ」にもブレーキをかけています。

 確かに、税収の2割程度を占める消費税の廃止は、財政悪化につながる要因となりますが、経済政策としては積極財政になるので、景気刺激策となって財政好転要因にもなりえます。要するに、財政では悪化と好転の綱引き状態になりますが、経済好転は確実です。

 マレーシア経済をみると、マクロ経済は好調です。去年の実質経済成長率は5.9%、インフレ率は3.8%、失業率は3.4%でした。

 マハティール政権は好調な経済を維持するために、積極財政を行い、経済成長を確実にする戦略をとっているともみえます。

 マレーシアで起きていることを眺めた目で、日本を見てみますと――

 

▼来年10月から消費税を10%に引き上げ(5・4兆円負担増)

▼採算が疑問視されている総事業費9兆円(うち3兆円は政府の融資)のリニア事業は断固推進

▼自民党安全保障調査会が防衛費をGDP1%(5兆円)から2%(10兆円)に引き上げを提案

▼財政健全化は社会保障費カットで

▼どんなにコケにされても「米国ベッタリ」を貫く――。

 

目の前、真っ暗であります

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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