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 国の年金制度だけでは老後が不安なら、保険会社などが提供する個人年金保険に加入するという手があります。受け取れる金額や支給開始年齢などは商品によって異なりますが、おおむね会社を定年退職してリタイヤする年齢まで保険料を納めることで、その後の一定期間か、死ぬまで毎年年金が受け取れる貯蓄型の商品になっています。

 多くの個人年金では、満期を迎えるまでに本人が亡くなった時には遺族に死亡給付金として支払われるようになっています。そのため、生命保険と同じように年金の受取人を配偶者としている人も多いかもしれません。

 しかし保険料を自分が支払って配偶者を受取人とする個人年金は、いざ満期を迎えたとき、多額の年金を受け取れるどころか払いきれないほどの贈与税が課されてしまう可能性があるリスクをもちます。

 個人年金も生命保険と同様、保険料を実際に負担した人と、保険料を受け取る人の関係によって課される税金が変わってきます。どちらも本人であれば「所得税」が課されますが、受取人が異なれば保険金は「贈与税」か「相続税」の対象となります。

 しかも生命保険金であれば、あくまで税金は実際に受け取った保険金にかかるので、「払いたくでも納税資金がない」という事態は通常は考えにくいでしょう。しかし個人年金の場合はそうはいきません。年金は長い期間にわたって少しずつ支払われますが、贈与税は満期を迎えて一度目の受け取りを行うタイミングで、その時点での「評価額」全体に贈与税がかかるからです。例えば1年あたり50万円を受け取る年金に対して、一気に数百万円の税金が課されることもあり得ます。なお2年目以降も、初年度の評価額から運用で増えた分について所得税が課されます。

 このような事態を防ぐためには、満期を迎える前に、年金の受取人を保険料を支払ってきた本人に変更しておいた方がいいでしょう。もっとも、その場合でも変更時点までに積み上げてきた「保険金を受け取る権利」を贈与した扱いにはなりますので、完全に贈与税を免れることはできません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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