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最近、相続税や贈与税を調べる人が急増しております。5月1日からの1週間で「相続税」「相続対策」といったキーワードのグーグル検索件数が30%~45%増えました。志村けんさんや岡江久美子さんといった著名人が亡くなったことも突然死の不安に拍車をかけているのかもしれません。

 しかしネットで聞きかじった程度の「にわか生前贈与」であれば逆に手を出さない方が賢明です。なぜなら本当に突然死した時に、財産を受け取った子や孫に迷惑が掛かる可能性が高いからです。にわか生前贈与は子や孫の負担になる可能性があります。来年亡くなっても節税になる生前贈与について考えてみましょう。

 

(1)死の直前3年間の贈与は110万円以下であっても相続税の対象となります。

110万円以下の生前贈与は相続税対策の王道です。一般的な贈与を対象とする暦年課税制度では、年間110万円以下の贈与には贈与税がかからないからです。ただし、相続税法には生前贈与加算という制度があります。相続開始以前3年間に相続人や受贈者が被相続人の生前に贈与された財産額は、相続税の計算基準である課税価格に加算するというものです。もらった財産に関して払った贈与税は相続税額から差し引けますが、大抵の人は生前贈与で贈与税がかからないように110万円以下の贈与に抑えています。贈与税がかからないように親が子に贈与しても2年後に亡くなってしまえば子は生前贈与分も相続税を納めることになります。

なお、相続人や受遺者が贈与を受けた年に贈与者が亡くなると、贈与財産は贈与税ではなく相続税の課税対象となります。すなわち、贈与から3年以内に贈与者が死んでしまうと相続税対策は無駄になるということです。

 

(2)教育資金と結婚・子育て資金の使い残しには相続税がかかります。

教育資金の贈与税の非課税制度や結婚・子育て資金の贈与税の非課税制度を使った贈与も最近、相続税対策の一つとして注目を集めています。死亡日以前3年以内に契約したものであっても生前贈与加算の対象とはなりません。一見すると相続税対策として使えそうですが、これらの制度にも課税リスクがあります。

贈与者の死亡時、信託銀行の口座に贈与した資金の使い残しがあると、その使い残しはみなし相続財産となり相続税が課されます。教育資金は、信託銀行で贈与されたもののうちの残額が、結婚・子育ては残額全てが相続税の課税対象です。例え使い切れないほどの金額を教育資金として贈与税0円でもらったとしても、そこに相続税がかかるのなら、受け取った側にとってはありがた迷惑かもしれません。

 

(3)相続時精算課税制度は相続税の節税にはならない

相続時精算課税制度は「贈与税が2500万円まで非課税」として知られていますが、この制度を使って生前贈与した財産はすべて相続税の課税対象となります。

さらに「適用者同士の贈与では二度と暦年単位課税制度を使えない」「たとえ10万円の贈与でも贈与税の申告をしないと20%課税」「過去の贈与を忘れると過少申告加算税がかかる」などリスクだらけです。一見「大胆かつこれまでにないお得」のように見えますが、太っ腹ではない制度です。安易に使うのはやめた方がいいでしょう。

 

今までは、生前贈与した時の課税リスクについて記載してきましたが、次回は突然死しても節税できる生前贈与について考えてみましょう。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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