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現行法では法的に親子の縁を完全に切る方法はありません。結婚、養子縁組などで戸籍が分かれても、実の親との法律上の関係は変わりません。実質的に「親子の縁を切る」ということはあるものの法的に完全な他人になる事はなく、相続時には相続対象者であり、また生活扶養義務も生じます。困窮した親の扶養を子供が放棄した時は、親は家庭裁判所に申し立てることもできます。そして親が生活保護を申請した時には福祉事務所から子供に扶養照会文書が送られてくることになります。

現状で親子の関係を否定する制度としては、養子縁組や嫡出否認などがあるものの、やはり「親子」の関係を完全に断ち切ることは出来ません。なお、6歳までの子供を対象とした特別養子縁組では親子関係はなくなりますが、これは「勘当」の概念とは全く異なります。

唯一、子供を排除できる制度として存在するのは、「推定相続人の廃除」でしょう。相続人となる者が、財産を残す者に対して虐待や重大な侮辱を与えるほか、激しい浪費癖があると家庭裁判所が認めると、当該人は遺産相続の権利を失います。これこそ現代版「勘当」と言えるのかもしれません。

なお、時代劇によくみられる「勘当」は江戸時代には制度として認められていました。奉行所に勘当届を提出することにより人別帳から外すことが可能となります。人別帳とは、現在でいうところの戸籍原簿や租税台帳にあたります。このリストから外された者は「無宿」となり、家督や相続の権利も剥奪されます。当該無宿者が罪人となっても、元の家族は連座から外されます。家族と家を守る為に将来に不安のある子どもを排除する狙いもあっみたいです。なお、人別帳では勘当された人の名前の部分に札が貼られたところから、「札付きのワル」の語源となっています。

明治に入っても旧民法や旧戸籍法では離籍のうえで復籍を拒む制度が認められ、戸主による「博当」ができる時代でした。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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