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 任意調査は、適正な課税を行うために必要な資料を収集する目的で、納税者や関係者に対して質問検査権を行使するもので、純然たる行政手続きです。

 これに対して強制調査権の目的は、悪質な脱税者に対し、検察官に告発して刑事訴訟を求めることです。そのため、脱税の実態や脱税の実行行為者を明らかにし証明する為の証拠収集を行います。形式的には行政手続きですが、実質的には刑事手続きに近いものです。

 任意調査には罰則による間接強制があるとされますが、「令状を持ってこい」といわれれば、調査することは出来ません。

 調査で一番大事なのが、無予告で踏み込んだ時の現況です。日を改めてしまうと重要な証拠は隠されてしまいます。

 そもそも任意であるため、正当な理由があるのなら日程調整をすることができます。つまり、無予告に踏み込まれても「今日は約束がありまして応じることは出来ませんが、明日なら大丈夫です。」と答えれば調査拒否にはあたりません。

 調査拒否は一年以下の懲役、または50万円以下の罰金と定められていますが、当日さえ拒否できれば二重帳簿などの重要物証が隠滅できます。逃れる税金に対して刑罰が軽すぎるため、抑止効果が期待できません。

 これに対して強制調査は、裁判官からの許可状を得て、強制的に踏み込むことができ、留守でも警察官を立ち会わせて捜索が可能です。また必要な時には、着衣令状も発布されます。特に女性が下着の中に重要物証(印鑑や貸金庫の鍵など)を隠した場合に、着衣を捜索する権限を持つため、重要な現場には必ず女性査察官が配置されます。

 任意調査と強制調査では、調査権限にも圧倒的な差があります。任意調査ではパソコンのデータは、納税者の協力を得なければ見ることは出来ませんが、強制調査なら電子メールなどの電子データを押収することができます。自宅や会社のパソコンを差し押さえたうえで、ターゲットの同意なくしてデータを調査する権限を持ち、クラウドなどのネットワークに保存されている電子メールや会計帳簿なども、開示要請して収集する権限を持ちます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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