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 今年度の税制改正では、空き家の譲渡特例に関して大きな要件緩和がなされました。空き家の譲渡特例とは、相続した空き家について、一定の要件を満たしたうえで売却した場合、所定の要件を満たすことでその譲渡所得から3千万円の控除ができるというものです。この特例は、現状、空き家が全国で大きな問題になっていますので、その解決策の一つとして空き家を流通させることを目的に平成28年度改正で設けられました。

 この特例の適用を受けるには、空き家の売却時に空き家を改修するなどして耐震基準に適合させたり、売却時点までに相続した空き家を取り壊してその敷地を売却したりする必要があります。このため売主が自腹を切って要件を満たす必要があり、売主には大きな負担になります。そこで買主に空き家の改修費用や解体費用を負担させた上で売却してもよいことになっています。

 ところが問題は売値の要件です。売却代金が1億円を超えると特例は適用できませんが、この金額には買主が負担した費用も含めて「1億円」とされますので、結果として適用を受けられないこともありました。

 このような点を踏まえて、来年以後は、空き家を売却した翌年の2月15日までに、耐震基準を満たしたり、空き家を解体したりすれば、この特例を受けることができるようになります。現状は売却時にこれらの条件を満たしていなければなりませんでしたが、その期間が延長されたことにより、空き家を売った後、買主による改修や解体が認められることになります。なお売った後に買主が費用負担するため、負担してもらった費用については現状とは異なり売却代金には含まれず、先の1億円超となる問題も生じなくなります。

 しかしこの特例、改正されたとはいえ、買主が翌年2月15日までに要件を満たすためのこれらの処理を行っていなければ、売主は何も悪くないのに、空き家特例を受けることはできないことになります。言い換えれば、改正された後の特例の適用には、売主は買主の動向をチェックすることが必須になります。

 この点、改修や解体を所定の期日までに買主が行うこと、そして買主が要件を満たさないときには賠償義務があることなどを契約で取り交わすことは必須でしょう。それだけでも心もとないので、買主の管理も適正に行う必要があります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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