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 亡くなった人に預貯金などのプラスの財産と借金などのマイナスの財産の両方があるとき、相続人には3つの選択肢が与えられています。プラスもマイナスもすべて引き受ける「単純承認」、プラスの範囲内でのみマイナスも引き受ける「限定承認」、すべての引継ぎを拒否する「相続放棄」の3つです。

 相続放棄をすると遺産を1円も受け取れないのかというと、そうとも限りません。もし受取人を自分にした生命保険金があれば、これは相続放棄したかどうかにかかわらず受け取ることができます。保険金はあくまで受取人固有の財産だからです。ただし注意したいのは、相続放棄をした人が受け取った保険金も相続税の課税対象になるという点です。

 相続放棄した人が生命保険金を受け取ったときは、相続税を申告する際にも、いくつかポイントがあります。1つ目は、相続放棄した受取人も、生命保険金の非課税枠を計算するうえでは法定相続人に含まれることです。1人当たり500万円の枠が設けられている相続税の控除枠は、相続放棄した人の分も使えます。ただし放棄した本人にはその非課税枠は利用できません。

 例えば亡くなった社長に妻、長男、次男の3人の相続人がいたとして、受取保険金は妻が2千万円、長男と次男に1千万円ずつあり、次男だけが相続放棄をしたとします。すると非課税枠の使える2人については、妻が1千万円、長男は500万円に対してそれぞれ相続税が課されますが、相続放棄をした次男は非課税枠が使えず、受け取った1千万円にそのまま相続税が課されてしまいます。自分が受取人になっている生命保険があるときは、こうしたデメリットも踏まえたうえで相続放棄をするかを考えるようにしてください。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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