27c8ccbe2cd44b4adac36227fe9f2e59_s

 所得税や法人税にはない相続税独自のルールの一つとして「連帯納付義務」があります。複数いる相続人の内、誰かが相続税を払えないときに、他の相続人が肩代わりしてでも納めなければならない制度で、性格としては借金の連帯保証人に近い制度です。国税当局からすれば誰かが払うかは関係なく、遺産全体から生じた税負担分がすべて徴収されない限り納税義務が果たされたとはみなさないということらしいです。

 もちろん当局もできる限り本人から徴収しようとはしますが、様々な理由で納める能力がない、あるいは失踪したなどの理由で現実的に徴収が難しいとなれば、容赦なく連帯納付義務者である他の相続人のところに徴収にやってきます。そこで「自分には関係ない」と言い張っても無駄で、最悪の場合は連帯納付義務者の財産が差し押さえされることもあり得ます。連帯納付義務を免れるには、相続放棄をするしかありません。

 こうしたことを踏まえ、遺産分割協議をする際には、それぞれが負うことになる相続税額と、その納税資金にまで、思いを巡らしたほうがよいでしょう。たとえ他の相続人と仲が悪くて顔も見たくない相手だったとしても、まわりまわって自分に迷惑が降りかかることを考えれば知らんぶりはできないでしょう。

 なお連帯納付義務によって他の人の税金を肩代わりした場合、本来の納税義務者に対して立て替えた分を請求する「求償権」という法律上の権利が生じます。この権利を使うかどうかは自由ですが、相手に立て替え分を払える資力があるにもかかわらず求償権を行使しないと、今度は立て替えた分の贈与があったとみなされて新たな納税義務が生じます。

 例えば遺産分割協議が長引いてしまい、手元にまだ相続財産がないタイミングで納税を一時的に肩代わりしたが、その後協議がまとまり遺産が行きわたったというケースなどが考えられます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

「所長の独り言」一覧はこちら

 

免責
本記事の内容は投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。また、本記事を参考にして訴訟等行為に及んでも当事務所は一切関係がありませんので当事務所の名前等使用なさらぬようお願い申し上げます。