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 結婚して20年以上の夫婦が行う住宅や住宅資金の贈与は、贈与税の年間控除枠の110万円に加え、別枠で2千万円までを課税対象から除外することができます。この特例は、オスとメスが常に一緒に過ごす「おしどり」の名前から、おしどり贈与とも呼ばれています。

 注意したいのは、この制度を利用することで、かえって支出が増えることもある点です。住宅の贈与の際には、不動産取得税や登録免許税、専門家への報酬など、合計すると何十万円もの支出が生じます。

 例えば住宅の贈与を受けた人は名義変更の際に土地や住宅の固定資産税評価額の3%分の「不動産取得税」を支払わなければなりませんが、おしどり贈与を使わずに相続で住宅を受け取るケースだと、不動産取得税自体がかかりません。

 さらに所有者の移転登記にかかる「登録免許税」でも、贈与で住宅を受け取れば不動産価格の2%分の税金がかかりますが、相続でしたら0.4%に税率が下がります。

 税金以外でも、贈与の際に税務申告や登記手続きの代理を税理士や司法書士に依頼し、その後に相続が発生した際にも再び専門家に依頼するとなると、贈与せずに相続時だけ手続きを代理依頼した時と比べて支払う報酬総額が割高になります。

 おしどり贈与の目的は、生前に無税で贈与することで将来の相続税の負担を減らすことにあるのですが、そもそも夫婦間の相続では配偶者の税額軽減により1億6千万円までの相続財産には相続税がかからないことになっているので、なにも生前贈与しなくても相続税が0になる可能性は極めて高くなります。

 おしどり贈与を使って本当に税金や報酬を合わせた支出を抑えることができるのかどうかは、専門家によるシミュレーションをする必要がありそうです。

 ちなみにおしどり贈与は、同じ相手には一度しか使えません。利用した後に離婚して再婚したのなら適用は可能ですが、婚姻期間に20年の月日が条件となります。

 

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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