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 令和4年度改正の大きな項目の一つに「証拠書類のない簿外経費への対応策」という改正項目があります。これは、不正申告や無申告に適用される制度で、納税者の一定の資料や国税当局が行う反面調査で存在が判明しない一定の経費を、法人税や所得税の経費にしないとするものです。

不正申告や無申告は、許されるべきものではないため厳重な調査が必要となりますが、一方でこれらの申告に対する税務調査は国税調査官にとって非常に労力がかかるものとなります。特に簿外経費の存在は労力を必要とします。これは文字通り帳簿に記載されていない経費を意味しますが、これらの経費についても事業に関する経費であれば、現状は法人税や所得税の経費として認められています。特にこれら経費についても国税当局が立証する必要がありますので、帳簿に書いていない経費についても税務調査をし、その結果判明した経費については、認めなければなりません。

しかしそうなると社会悪である不正申告や無申告の納税者が簿外経費を主張することで税金を下げることにことにもつながり問題があるのも事実です。悪質な納税者であれば架空の簿外経費をでっちあげて国税当局の負担を大きくさせるようなことを行う可能性もあります。これらの点を踏まえて、本制度では商品販売の原価である商品の取得費などを除いた一定の簿外経費(間接経費)を制限し、帳簿書類やその他の原始記録、そして国税当局の反面調査などで存在が判明しない間接経費については、原則として税金の計算上の経費を認めないとしたのです。

しかし現実問題として、無申告の納税者は、そもそも帳簿書類の保存がないことが多く、この改正が適用されますと、経費の証明ができず間接経費が0という事態になりかねません。税務調査官が反面調査すればある程度の経費が認められますが、反面調査をするかいなかは調査官の判断次第です。

このように無申告者にとっては、非常に厳しい制度が出来上がったわけですが、仮に無申告であったとしても、国税当局から調査の予告が入る前に自主的に期限後申告をすれば、この規定の対象から外れます。事業者は無申告することのないよう、一日も早い申告が望まれます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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